令和4年認定考査 解答例
今年(令和5年)の認定考査は9月10日(日)ですね。
私は令和3年に受けましたが、それまでのすべての過去問を分析しました。(ブログにあります)
自分がせっかく学んだことを忘れ去ってしまわないように(残念ながら、訴状を書くような実務は全くありませんでした)、令和4年の問題を解いてみました。
法務省発表の「出題の趣旨」を見ています(正解の発表はないです)ので、合格点(40点/70点)は取れていると思います。
一方で、私の理解もまだまだで、高得点領域の採点は結構厳しめの感じがしますので、60点以上の答案にはなっていないと思います。
あくまで参考にして頂ければ、と思います。
民事訴訟における「主要事実」は何か?ということは、司法書士試験の範囲でなく、認定考査の範囲ですが、認定考査の学習で、
原告の請求原因(主要事実1、主要事実2、・・・)
↓
被告の抗弁(主要事実1、主要事実2、・・・)
↓
原告の再抗弁(主要事実1、主要事実2、・・・)
↓
被告の再再抗弁(主要事実1、主要事実2、・・・)
と、お互いが否認する主要事実について、相手側が立証して、裁判官がどちらが真実である心証を持つのか争うのが民事訴訟の仕組みなんだと分かってから、司法書士試験範囲の民事訴訟法も理解がずいぶん深まりました。
こういうことが主要事実なんだ、というイメージを持つだけでも有益だと思います。
第1問
(1)訴訟物
所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権、1個
(2)請求の趣旨
Yは、本件土地について、別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続きをせよ
(3)請求原因
① Aは、令和元年11月15日当時、本件土地を所有していた。
② Aは、令和3年10月1日、死亡した。
③ XはAの子である。
④ 本件土地について、別紙登記目録記載のY名義の抵当権設定登記がある。
(4)抗弁1(登記保持権限の抗弁)
1⃣ YとAは、平成29年12月10日、次の金銭消費貸借契約を結んだ。
元金100万円、弁済期日平成30年12月10日
2⃣ Yは、同日、Aに1⃣に基づき、100万円を交付した。
3⃣ YとAは、令和元年11月15日、1⃣の債務を担保するため、本件土地に抵当権を設定する合意をした。
4⃣ Aは、3⃣の当時、本件土地を所有していた。
5⃣ ④の登記は、3⃣の契約に基づくものである。
抗弁2(所有権喪失(売買)の抗弁)
1⃣’Aは、令和2年1月10日、Cに本件土地を売った。
(5)再抗弁1(抗弁1に対して、抵当権の被担保債権について弁済したとの抗弁)
⓵ Aは、令和2年3月24日、Yに100万円を返済した。
⓶ ⓵は、1⃣の債務の履行としてした。
再抗弁2(抗弁1に対して、相殺を援用するとの抗弁)
⓵’Aは、平成27年8月20日、Yに本件絵画を100万円で売った。
⓶’Aは、同日、Yに本件絵画を引き渡した。
⓷’②、③と同じ
⓸’Xは、令和4年8月1日、Yに相殺の意思表示をした。
再抗弁3(抗弁2に対して、売買は詐欺により取り消したとの抗弁)
⓵”Cは、本件土地を入手するため、故意に本件土地から有害物質が検出されたと虚偽を言い、Aをだまして、1⃣’の売買契約を締結させようとした。
⓶”Aは、⓵”によって、錯誤に陥った。
⓷”Aは、⓶”によって、1⃣’の契約を締結した。
⓸”Aは、令和2年2月22日、Cに1⃣’の契約を取り消す旨の意思表示をした。
(6)Yは再抗弁2に対する再々抗弁として、絵画売買代金債務の消滅時効を主張することはできない。
民法および判例において、時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができる、とされており、その趣旨としては、相殺されることを防止するための時効援用を不当とし、A(およびX)の相殺に対する期待の保護を重視しているものである。
(7)
① ア 真正、イ 本人、ウ 代理人、エ 署名、オ 二段、カ 立証責任
② 本人が押印したものではない、として否認する。
(8)
①「Aは、平成27年8月20日、Yに本件絵画を100万円で売った」ことを認めることは主要事実の自白にあたる。主要事実の自白を撤回することは原則として認められないから。
②自白の撤回は、「相手方の同意がある場合」または「自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいたものであれば」することができる。
第2問
(1)司法書士は反訴に関する訴訟行為をすることはできない。訴額140万円を超えるから。
(2)一部請求訴訟で一部敗訴した原告が残部を請求する訴訟を提起することはできない。
紛争の蒸し返しにあたり、信義則上許されないから。
本問の状況:
・原告が貸金100万円のうち、60万円を請求(一部請求訴訟)
・被告が50万円を返済済みであることを認定し、被告に50万円を支払えとの判決
原告が残部40万円を請求する訴訟を提起することの是非 → できませんよね
第3問
X→Yの訴訟継続中。Xの訴訟代理人司法書士R。
①Y→訴外Z Yの訴訟代理人になれるか?
Xの同意があればなれる。→受任しない方が良いと思います。
②Y所有の不動産に係る所有権移転登記手続きの代理ができるか?
公正を保ちえない事件の受任にあたる可能性があり、受任しない方が良い。