認定考査で問われる民事訴訟法(主要事実・自白・立証責任・二段の推定)

司法書士試験の復習にもなりますが、もっと本質的な基本の問題が多いです。
本記事の赤字で示した部分が、認定考査では、繰り返し問われています。

具体例で

金銭消費貸借において、返済が無いため、保証人に対して、貸金返還請求訴訟を提起したとします。

X(貸主:原告)、Z(借主:行方をくらます)、Y(保証人:被告)

Xは、民法587条、591条、446条など、法律上の要件を充足するための事実(①~⑥)を主張する必要があります。

原告Xの請求原因((貸金債務の)保証債務履行請求)
① XとZは、〇年〇月〇日、次の消費貸借契約を結んだ。
  貸金:40万円、弁済期:定めない
② Xは、同日、Zに、①に基づき、40万円を交付した。
③ Yは、〇年〇月〇日 、Xに、①の債務を保証した。
④ ③は書面によりなされた。
⑤ Xは、〇年〇月〇日、Zに、①の貸金の返還を求めた。
⑥ ⑤から相当期間が経過した。

被告Yの抗弁(主たる債務の消滅時効)
1⃣ 〇年〇月〇日 は経過した。
2⃣ Yは、〇年〇月〇日、Xに、時効援用の意思表示をした。

原告Xの再抗弁(時効の完成猶予)
⓵ Xは、〇年〇月〇日、Zに貸金返還の催告をした。
⓶ Xは、〇年〇月〇日(⓵から6月以内)、本件訴えを提起した。

「法律上の要件を充足するための①~⑥の事実があるから、XはYに貸金返還請求ができる」
という関係になっています。
①~⑥(そして1⃣、2⃣、⓵、⓶も)の事実を「主要事実」といいます。

「主要事実」は、Xが主張(訴状等の書面に記載し、口頭弁論等では弁論する)しなければなりません。
当事者が主張していないのに、裁判所が職権で採用して、判決の基礎としてはいけません。
(弁論主義の第1テーゼ)

Yは、①~⑥について、認める(自白)・否認する・知らない(不知)のいずれかを意思表示する必要があります。
答弁書その他の準備書面を提出せずに期日に欠席するなどして、①~⑥に対して沈黙すると、自白が成立します。(擬制自白)
ただし、行方不明の被告等に送達をする公示送達においては擬制自白は成立しません。

自白の撤回をするには、つぎのいずれかの場合である必要があります。
1)相手方の同意があるとき
2)自白が刑事上罰すべき行為に基づくとき(脅迫されたなど)
3)自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいてなされたとき
 (真実に反することの証明があれば錯誤は事実上推定される)

①~⑥の主要事実のうち、自白が成立した主要事実については、裁判所は、立証を要せずに真実と認め、判決の資料に採用しなくてはなりません。
(弁論主義の第2テーゼ)

Yが③、④の事実を「否認する」または「知らない」と弁論すれば、原則として主張した
Xが「立証」しなければいけません。(立証責任は、原則として、主張した側(利益を受ける側)にあると考えます)

また、裁判所は、当事者間に争いのある事実の認定については、原則として、当事者の申し出た証拠によらなければなりません。
(弁論主義の第3テーゼ:職権証拠調べの禁止)


そこでXは、「保証契約書」を出してきます。
(③、④を立証するための、「書証」となります)

Yは、「そんなのは書いた記憶がない、Zが偽造したと思う」
Xは、「Yの実印押印と、印鑑証明書がある」
Yは、「Z(息子)が勝手に持ち出して、押印しただけだ」

上記が、間接事実です。

間接事実は裁判所の判断を拘束せず、「自由心証主義」で、自由な裁量で、どちらの主張が真実か(③、④の事実が真実か)を判断して良いです。

民事訴訟法における「二段の推定」

契約書などの私文書が「本人の意思で作られた本物(真正な成立)」であることを証明しやすくするための法的な仕組みです。

契約書に本人の印鑑が押されている場合、以下の2段階のステップ(推定)を踏んで文書全体の有効性を導きます。

1段目の推定(事実上の推定)

  • 前提: 文書に押されている印影(ハンコの跡)が、本人の実印や認印と一致する。
  • 導かれる推定: 「本人の印鑑が存在する以上、他人ではなく本人が自分の意思で押印した」と推認する。
  • 根拠: 「大切な印鑑は本人が自ら管理・使用する」という社会的な経験則(判例法理)に基づきます。

2段目の推定(法律上の推定)

  • 前提: 1段目によって「本人の意思による押印」が認められる。
  • 導かれる推定: 「本人の意思で押印されたのだから、文書の内容全体も本人の意思に基づいて作成された(真正に成立した)」と法的に推定する。
  • 根拠: 民事訴訟法第228条4項(「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」)に基づきます。

反論・覆す方法(争い方) 相手方がこの推定を覆したい場合、次のいずれかを立証(反証)する必要があります。

  • 1段目の反証(盗用・冒用の主張): 「印鑑を盗まれて勝手に押された」「無理やり押された」など、印鑑の保管状況や経緯から本人の意思に基づかない押印であることを証明する。
  • 2段目の反証(白紙委任・変造の主張): 「白紙の紙にハンコだけを押した後に、勝手に契約内容を書き加えられた」など、押印と本文作成の関連性がないことを証明する。

印影の一致さえ証明できれば、「本人が押した(1段目)」→「文書全体が本物である(2段目)」という論理の橋渡しがなされるため、契約書の真正を立証する側にとって強力な手段となっています。