認定考査の過去問分析②民事訴訟手続、司法書士倫理

今回は、要件事実以外の、民事訴訟手続き、簡裁訴訟代理権の範囲、司法書士倫理編です。

民訴手続き、民保手続きは、司法書士試験とほとんど同じレベルの出題ですが、簡裁訴訟代理権の範囲と司法書士倫理についてはある程度整理が必要です。

それでも、同じ事項(書証の二段の推定、占有移転禁止の仮処分、訴額の計算など)が繰り返し出題されますので、過去問が解ければ多分合格点だと思います。

第1回認定考査(平成14年度)

第2問(改)
X→Y 訴額100万円の訴訟係属中、
Y→X 訴額150万円の反訴があった。
Xの訴訟代理人司法書士Aは、Y→Xの反訴においてXを代理できるか?

解答:できない。訴額140万円を超えるから。

第3問
X→Y訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、Y→訴外Bの
①訴状作成できるか?
②所有権移転登記手続きできるか?

解答①:Xの同意があればできる。
解答②:公正を保ち得ない事件の受任にあたる可能性があり、受任しない方が良い。

その他のテーマ
書証の二段の推定

第2回認定考査(平成15年度)

第2問(改)
X→Y(債務者)、Z(保証人) 貸金返還請求100万円のとき
Xの代理人司法書士Aは、YおよびZへの訴えを併合して提起できるか?

解答:できる。訴額は100万円となるから(200万円ではない)。

第3問
X→Y(債務者)、Z(保証人) 貸金返還請求100万円のとき
司法書士Bは、YとZの両名の代理人になれるか?

解答:なれる、が、求償など将来対立する可能性があること等を十分に説明要。

その他のテーマ
書証の二段の推定、公示送達と擬制自白の成否

第3回認定考査(平成16年度)

第2問
X→Yの訴訟において、司法書士Aが無料法律相談会で、Yから
①上記事件の具体的な相談
②別の登記の相談を受けていた場合に、
Xの代理人になれるか?

解答①:なれない。すでに当事件においてYの協議を受け、賛助しているから。
解答②:なれる。

第3問
X→Y 土地(100万円)の所有権確認訴訟。Yから、
①訴状受領後直ちに
②第1回口頭弁論で本案陳述した後
地方裁判所への移送の申立てがあった。Xの代理人司法書士Aは、訴訟遂行できるか?

解答①:できない。地方裁判所へ必要的に移送される。
解答②:できる。必要的に移送はされない。

その他のテーマ
占有移転禁止の仮処分

第4回認定考査(平成17年度)

第2問
X→Yの訴訟において、司法書士法人の社員AはXからの依頼で訴状を作成していた後、法人を脱退した。
AはYの代理人になれるか?

解答:なれない。自ら関与した事件の相手方の代理人にはなれない。

第3問
X→Yの60万円の売買代金支払い請求訴訟。Xの代理人司法書士A。
①Aは訴えの提起後、少額訴訟による裁判を求めることができるか?
②少額訴訟での勝訴後、Aは執行手続きができるか?
③②で、少額訴訟→通常訴訟に移行していたときはどうか?

解答①:できない。訴えの提起の時にしなければダメ。
解答②:自ら代理した事件については、少額訴訟債権執行の手続きの代理ができる。
解答③:執行手続きの代理はできない。少額訴訟債権執行のみ認められている。

第5回認定考査(平成18年度)

第2問
X→Yの訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、訴外B→Xの訴状を作成できるか?

解答:Xの同意があればできる(通常は同意をもらえない)。

第3問
X→Yの訴訟で、Y敗訴の場合、Yの代理人司法書士Cは控訴できるか?

解答:控訴状の提出まではできるが、訴状に攻撃防御方法の記載はできない。

その他のテーマ
訴えの提起前の照会制度

第6回認定考査(平成19年度)

第2問
X→Yの訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、Yから筆界特定に関する法務局提出書類作成の依頼を受けられるか?

解答:Xの同意があればできる。

第3問
X→Yの訴訟中、Yに対し占有移転禁止の仮処分命令がされた。Yの代理人司法書士Bは、
①保全異議の申立て、保全異議の手続きの代理はできるか?
②保全異議が却下された場合、保全抗告の申立て、保全抗告手続きの代理はできるか?

解答①:簡裁が管轄の場合、どちらも代理できる。
解答②:保全抗告の申立てはできるが、保全抗告に係る手続きはできない(地裁管轄のため)。

第7回認定考査(平成20年度)

第2問
X→Y(保証人)、Z(債務者) 貸金返還請求訴訟の場合
①貸金80万円で、YとZへの請求を併合して訴えを提起する場合の訴額?
②貸金130万円で、Zへのみ訴えを提起する場合の訴額?

解答①:80万円(加算されて160万円にならない)
解答②:130万円(利息・損害金などの附帯請求額は含めない)

第3問
X→Y(保証人)、Z(債務者) 貸金返還請求訴訟の場合 、Yの代理人司法書士Aは、Zの裁判書類作成の代理はできるか?

解答:YZ間の対立が強く予想される場合は、Zの裁判書類作成の代理の受任はしない方が良い。

第8回認定考査(平成21年度)

第2問
X→Yの訴訟において、Xが主張した主要事実をYが認めた。その後Yの代理人となった司法書士Aは、その自白が間違いであったと主張して争うことはできるか?

解答:自白の撤回は、「相手側の同意があれば」または「自白が真実に反し錯誤に基づいたものであれば」できる。AはXの同意を得るか、Yの自白が真実に反するものであることを立証する方針で、争うことができる。

第3問
X→Yの訴訟において 、Xの訴訟代理人Q司法書士法人。
①Q法人の従業員司法書士Bは、Yの訴訟代理人になれるか?
②Yからの依頼が後見登記申請手続きの場合はどうか?

解答①:なれない。
解答②:司法書士倫理上難しいと考えられる。(Xの立場にたてば公正を保ち得ない)

その他のテーマ
文書提出命令の申立て

第9回認定考査(平成22年度)

第2問
X→Yの訴訟において 、Yの証人なのにXに有利な証言をした。
①裁判所は、Xに有利な証拠として採用できるか?
②Yの代理人は、証人尋問の後、証拠の申出の撤回ができるか?

解答①:できる(証拠共通の法則)。
解答②:できない。(証人尋問前ならできます)

第3問
X→Yの訴訟において、訴訟が係属する前に、司法書士AがYから
①無料法律相談会で上記事件の具体的な相談を受けて教示していた
②Y→Zの訴訟代理人になり、和解を成立させ、報酬を得ていた
AはXの代理人になれるか?

解答①:なれない。
解答②:なれる(Y→Zの訴訟は終了している)。

その他のテーマ
文章送付嘱託の申立て、不動産に対する仮差押え

第10回認定考査(平成23年度)

第2問
X→Yの訴訟(賃貸借契約に基づく賃料請求)において、Yが雨漏り修繕費用での相殺の抗弁を提出した。
YはXに対し、修繕費用を請求する別訴を提起できるか?

解答:(同一権利について別訴でそれぞれ既判力が生じることを防止する)二重起訴禁止の考え方から、別訴を提起すべきではない。

第3問
X→Yの訴訟において 、Xの訴訟代理人Q司法書士法人。
Qの使用人であった司法書士Aが独立したあと、Yの代理人になれるか?

解答:法人在職中、簡裁訴訟代理関係業務または裁判書類作成業務で自ら本事件に関与していた場合は、なれない。

その他のテーマ
占有移転禁止の仮処分

第11回認定考査(平成24年度)

第2問
X→Yの訴訟において、Y→Xの訴額150万円の反訴があった。Xの代理人司法書士A。
①反訴に応訴することに特別の委任を受ける必要は?(訴訟代理人一般論として)
②反訴に関する訴訟行為はできるか?

解答①:反訴への応訴に特別の委任は不要。
解答②:できない。訴額140万円を超えるから。

第3問
X→Yの訴訟。A→Xの債権譲渡が裁判の対象となっている。
①過去にA→Yの所有権移転登記申請をしたことがある
②Y→Aの訴訟の訴状を作成したことがある(訴訟は終了)
司法書士Bは、Xの訴訟代理人になれるか?

解答①:なれる。
解答②:なれる。過去の事件の場合、違反とはいえないが、公正を保ち得ない事由がありそうなときは受任すべきでない。

その他のテーマ
公示送達をするための資料準備、訴訟告知

第12回認定考査(平成25年度)

第2問
X→Yの訴訟(訴額100万円)。Xより請求金額を60万円追加してほしいと依頼を受けた代理人司法書士Aができる訴訟行為とその可否?

解答:訴えの変更が考えられるが、訴額が160万円となるのでAは訴訟行為ができない。

第3問
X→A(不法行為者)、Y(保証人)の併合訴訟。Yの代理人Bは、Aの代理人にもなれるか?

解答:なれるが、将来の求償などでの対立の顕在化→双方の代理人辞任などの可能性を十分に説明要。

その他のテーマ
書証の二段の推定

第13回認定考査(平成26年度)

第2問
X→Yの訴訟(訴額100万円)。Yの代理人司法書士Bは、争いのある150万円の反対債権で相殺の抗弁を提出できるか?

解答:できない。紛争性のある150万円の債権で争うことは簡裁訴訟代理権の範囲を超える。

第3問
X→Yの訴訟 。A司法書士・B司法書士事務所は共同事務所。
法律相談会で、Xが本事件についてAに具体的に相談していた。BはYの代理人になれるか?

なれない。業務の公正を保ち得る事由(具体的には?)がない限りダメ(司法書士倫理82条)。

その他のテーマ
少額訴訟手続きは訴えの提起の際に申出なければならないこと

第14回認定考査(平成27年度)

第2問
X→Yの訴訟。Xの代理人司法書士A、Yの代理人司法書士B。Xの請求が全面に認容される判決。
①Bは特別な委任を受ければ控訴できるか?
②Aは強制執行の申立てができるか?

解答①:控訴の提起はできる。控訴審の手続きはダメ(地裁なので)。
解答②:できない。少額訴訟債権執行を除き、司法書士は民事執行を代理できない。

第3問
X→Yの訴訟。Xの代理人司法書士A 。
訴訟係属中に、Y→訴外ZのYの代理人にもなれるか?

解答:Xの同意があればなれる。

その他のテーマ
間接事実(=証拠と同じ働き)に対する自白は裁判所を拘束しないこと

第15回認定考査(平成28年度)

第2問
X→Y 300万円返還請求したい。Yは死亡し、相続人A、B、C。
①Xは誰を被告として、どのような訴訟を提起できるか?
②司法書士はXを代理できるか?

解答①:ABCを共同被告として300万円を請求する訴訟 or 各A、B,Cを被告として各別に100万円を請求する訴訟。
解答②:司法書士が代理できるという理由だけで、上記各別の訴額100万円の訴訟を提起すべきではない(品位保持義務違反)。

第3問
X→Y 抵当権抹消登記手続き請求訴訟。A死亡し、X、B、Cが相続人。(Xが保存行為として1人で訴訟)
Yは被担保債権がまだ弁済されていないとして争っている。
司法書士Dが、訴訟前に、Xの依頼で抵当権実行禁止の仮処分の申立書を作成した。
①Dは、Y→Xの貸金返還請求訴訟のYの代理人になれるか?
②Dは、Y→Bの 貸金返還請求訴訟のYの代理人になれるか?

解答①:裁判書類作成業務をした事件で、相手方の代理人になることはできない。
解答②:「相手方」には直接該当しないが、対立構造は①と同じである。代理人になるべきではない。

その他のテーマ
自白が成立した事実に対し証人(立証)は要らないこと

第16回認定考査(平成29年度)

第2問
X→Yの訴訟。土地明渡し請求の他に、損害賠償金150万円を請求したい。
①損害賠償金訴訟を別訴で提起する場合。司法書士AはXを代理できるか?
②損害賠償請求を上記訴訟の附帯請求とする場合、AはXを代理できるか?

解答①:できない。訴額140万円を超えるから。
解答②:できる。(土地明渡しの訴額に附帯請求の価額は加算されないから)

第3問
X→Yの訴訟。Xの代理人司法書士法人Qの担当司法書士A。
Xの請求棄却の判決が確定。Aは法人を退社して独立した。
Y→Xの所有権移転登記訴訟(前事件と関連あり)のYの代理人にAはなれるか?

解答:できない。法人所属期間中に自ら簡裁訴訟代理や裁判書類作成業務をした事件については、相手方の代理人になることはできない。前事件は確定しているが関連のある後行の訴訟事件でも同じである。

その他のテーマ
書証の二段の推定、占有移転禁止の仮処分

第17回認定考査(平成30年度)

第2問
X→Y、Z(無権代理人) 売買契約に基づく土地引渡請求。
①Y,Zへの請求の判断が別々にならないようにするための訴訟行為は?
②Zが行方不明のときに採る送達方法?と請求原因事実の立証要否?
③150万円の反対債権での相殺の抗弁の提出可否?(代理人は司法書士)

解答① 同時審判の申出。
解答② 公示送達。擬制自白が成立しないので、顕著な事実以外は立証を要する。
解答③ 反対債権に紛争がある場合は、司法書士が相殺の抗弁の訴訟行為の代理はできない。

第3問
X→Y、Z(無権代理人) 。
Yの代理人司法書士Aは、本事件に関するZの裁判書類作成業務を受任できるか?
なお、YとZ間には明らかに対立がある。

解答:できない。利害相反関係のある事件の受任は司法書士倫理上できない。

第18回認定考査(令和元年度)

第2問(この回は特殊で、債務不存在確認の訴えが出題された)
Y→Xの債務が存在しないことの確認を求める訴え
①請求の趣旨?
②請求原因?
③X→Yの債務履行請求訴訟が反訴で提起された場合、本訴訟はどうなるか?
④③の訴額が150万円であった場合、Yの代理人司法書士Aは反訴状の送達を受けられるか?

解答①:Yは、YX間の〇年〇月〇日の〇〇契約に基づく〇〇債務が存在しないことを確認する、との判決を求める。
解答②:Xは 、YX間の〇年〇月〇日の〇〇契約に基づく〇〇請求権が存在すると主張している。
解答③:確認の利益を欠くことになり、判決で却下される。
解答④:送達を受けられない。

第3問
X→Yの訴訟係属前、無料相談会で司法書士Aが本事件についてYから具体的な相談を受け教示をしていた。
①Aは、Xの訴訟代理人になれるか?
②AとBは2人で共同事務所を営んでいる。BはXの訴訟代理人になれるか?

解答①:なれない。相手方と具体的に協議し、賛助した事件である。
解答②:なれない。他の所属司法書士が業務を行い得ない事件については、公正を保ち得る事由がない限り(ふつうはない)、依頼を受けられない。

その他のテーマ
携帯電話の録音データの証拠調べ→書証に準ずる

第19回認定考査(令和2年度)

第2問
X→Yの訴訟。Xの代理人司法書士A。Xの請求が棄却される判決が出た。
①Aは、Xから特別の委任を受けて控訴の提起ができるか?
②Aは、控訴審で攻撃防御方法を記載した準備書面を提出したい。どのように関与できるか?

解答①:できる。
解答②:準備書面の作成をして、X本人の提出を支援する。(訴訟代理でなく、本人裁判支援)

第3問
X→Yの訴訟。Yの無権代理人としてZがいる。Xの代理人司法書士A。
Aは、Y→Zの無権代理人の責任追及する訴状作成の依頼を受けられるか?

解答:受けられない。Xの同意があったとしても、基礎を共通とする事件であり、別の事件とはいえない。

その他のテーマ
主要事実の認否において、不知としたときは立証を要し、沈黙した時は原則自白が成立して、主張者側での立証を要しないこと

第20回認定考査(令和3年度)

第3問(1)
X→Yの訴訟。認定司法書士P。PはXからの訴訟代理の依頼を拒めるか?

解答:拒める。簡裁訴訟代理等業務に司法書士の受任義務はない。

第3問(2)
X→Yの訴訟。認定司法書士P。X→Pの相談済み。Y→Pの相談に応じられるか?

解答:応じられない。すでにXからの相談を受け教示しているから。

その他のテーマ
占有移転禁止の仮処分
裁判所の職権で証人尋問はできない。(弁論主義により、主要事実の主張やその立証方法や対象は、当事者の申し出によるものでなければならないから)