半ライン申請での失敗シリーズ

先輩司法書士の方がやらかしたことのある、オンライン申請(といっても特例方式です)に関わる失敗事例を整理してみます。新人研修と配属研修中のノートからです。

1.登記原因証明情報のPDFの添付忘れ

特例方式では、添付書面は申請の後に郵送または持参提出すればよいですが、虚偽登記申請の防止のために登記原因の疎明が必要であり、申請時に登記原因証明情報のPDFファイル(電子印鑑は不要)の添付を要求されます。

添付を忘れたまま法務局への送信ボタンを押してしまうと、いったん補正のための取り下げが必要となります。(何とかしてくれ、と交渉してもダメだそうです

補正のための取り下げをしている間に別の知らない登記が入ってしまう、という悲劇はまだ聞いたことはありませんが、そもそも「売買などの登記を間違いなくスムーズにする」ために、司法書士に手続きが依頼されるのですから、依頼者への釈明をする際、相当恥ずかしい思いをすることになると思われます。

2.登記原因証明情報への日付記入忘れ

せっかく登記原因証明情報のPDFを添付しても、日付記入忘れ2頁目以降の抜けなどがあれば、やはり補正のための取り下げとなります。

登記原因証明情報などは、依頼者に記名押印して頂いた後、一番最後に日付を記入することが多いですが(間違い防止のためなのですが)、記入し忘れれば、登記原因証明情報になり得ません。

書面申請においては、提出前には当然、添付書類を整理・チェックするので忘れる人はいないでしょうが、慌て気味にオンライン申請すると、悪魔に魅入られたように、気づかないまま送信ボタンをクリックしてしまうことがあるそうです。

3.抵当権設定契約書の原本還付忘れ

これはオンライン申請だけではないです。
土地売買などでは、売買契約書は使用せずに、登記所差し入れ方式の登記原因証明情報を作成しますが(記述式試験の題材ですね)、これは原本還付しません(できません)。

一方、抵当権設定登記では、銀行と借入された方との抵当権設定契約書をそのまま登記原因証明情報とします。

これを原本還付し忘れると(登記所がだまって気を利かして返してくれることはありません)、銀行に謝罪した上で、始末書を書かされる、そうです。
それ以降、仕事をもらえなくなるかどうかは、それまでの信頼度によりそうです。

銀行発行の抵当権解除証書もきちんと原本還付して、ローンを完済した方(抹消登記権利者)に返してあげたいです。

4.連件の設定し忘れ

これも書面申請であれば間違えることはなさそうですが、連件申請において添付書面を「前件添付」としているのに、送信ボタンを押す前に連件の設定をし忘れると、後の申請が添付書面のないものとなってしまいます。
これも補正するのには骨が折れそうです。

(番外編)決済当日の朝もう一度登記情報を確認すること

これは新人集合研修でも、配属研修でも教えられました。
登記申請の依頼を受けた後、実際の決済日までは1週間くらいの間があることが多いですが、依頼受任時に確認した登記情報の後に、知らない登記が入っていないかを確認しなさい、ということです。

例えば差し押えの登記が入ったことを知らないで、売買の決済にGOサインを出してしまえば大変なことになりそうです。

配属研修先の先生は、「30年近い司法書士生活の中で、1回だけそういうことがあった(もちろん事前に気づいた)」とおっしゃっていました。

今後の司法書士生活の中で、冷や汗をかく場面はできるだけ少なくしたいものです。