募集株式の発行における、長期間の積み立て的な払込み
個人開業司法書士の商業登記のお客さん
私のような個人開業の司法書士が、商業登記の依頼を受けるのは、公開会社・大会社はほとんどなく(私は1件もありません)、1~2人の株主(社員)で、その方がそのまま取締役、代表取締役(代表社員)になっている会社です。
だから、司法書士試験の範囲で、実務でもよく出てくるので勉強をしておいた方が良いと思うのは、つぎのとおりです。
(1)合同会社の設立(定款の作成→登記申請)
(2)株式会社の設立(定款の作成→公証役場での認証手続き→出資証明の書類作成→登記申請)
(3)本店移転(管轄外移転を特に。登録免許税は6万円です。委任状は2枚要ります。←うっかりしたことあり。)
(4)目的変更(例えば、古物商の許認可申請のためなどに、結構頻繁にあります)
(5)有限会社全般(有限会社の数は結構多いです。取締役が1名となったための代表取締役氏名抹消なども結構あります)
(6)解散→清算結了登記(1人会社の方が、会社をたたむのをお手伝いすることもよくあります。知れない債権者に向けた官報公告をする機会も多いです。あらためて清算人の印鑑届出も必要です)
(7)取締役会廃止の登記(取締役が3名いなくなったときです。残り2人に代表権を付与することは少なく、株主総会や互選で代表取締役1名とすることが多いです。)
そして、それほど多くはないですが、今回の増資(募集株式の発行)の登記です。
長期間にわたって少しずつ出資の履行をされている場合
簡単のため、1人株主で、その方が、代表取締役とします。
500万円の増資(資本金の額の増額)をするために、いっぺんには払い込めないので、毎月100万円ずつ会社の口座に自己資金を振り込んでいたとします。
1月20日100万円→2月20日100万円→3月20日100万円→4月20日100万円→5月20日100万円
と通帳に記載があります。
このとき、「資本金の額を500万円増加する登記をしてほしい」と依頼を受けました。
杓子定規に5回に分けて募集株式発行をやると、株主総会議事録、総数引受契約書を5通つくり、そして実質500万円の増資に登録免許税15万円!(1回の申請でやれば3万5000円で同じです)、登記簿の資本金の額の欄も汚く(?)なりますので、そんな提案をご依頼者にはできません。
どうしたものかな?と結構悩みましたが、試験合格同期の司法書士の方のアドバイスを受けて、次のような組み立てをしました。
1月払込み→2月払込み→3月払込み→4月払込み→5月1日株主総会・総数引受契約→5月20日払込期日で払込み
(5月1日にする必要はなく、総数引受契約の場合、5月20日当日でもOKです←司法書士試験でもよくでる知識。ただ何となく2~3週間の期間を設定しました)
5月1日の1人(本人)株主総会で、払込金額500万円(全て資本金に)、発行する株式数〇〇株、払込期日〇年5月20日と「募集事項」を決め、同日の「総数引受契約の承認」(譲渡制限株式の割当先の承認ですね)をします。
5月1日の総数引受契約で、代表取締役-株主(本人間)で、払込み金額500万円(以前から振り込んだ預託金との合計とする、と念のため記載)、払込期日〇年5月20日、その他募集事項のとおりに契約します。
(登記申請書例)
登記の事由 募集株式発行
登記すべき事項 〇年5月20日変更
発行済株式の総数〇〇
資本金の額 〇〇
課税標準金額 金500万円
登録免許税額 金3万5000円
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
総数引受契約書 1通
払込み証明書 1通
(1月20日~5月20日の通帳の各100万円の入金にアンダーライン)
資本金の額の計上証明書 1通
委任状 1通
原則、「株主総会等での募集事項決定→申し込みまたは契約→払込み」となるはずですが、上記のように、払込期間や払込みの様態については、(きちんと辻褄があっていなければならないことは当然として)緩やかな取り扱いになっているようです。