二段の推定

受験勉強では無味乾燥で関心が持ちにくかった民事訴訟法が、特別研修で、ようやく自分にも関わりのありそうなものになってきます。

「二段の推定」とは

原告が、金銭消費貸借が成立しているとして、被告に対して貸金の返還を請求する訴訟を想定します。
金銭消費貸借が成立している証拠として、原告が、被告の実印押印のある金銭消費貸借契約書を提出したとします。

・本人の実印が契約書に押印されている
↓(①段目の推定:判例による)
・本人の意思に基づいて実印が押されている

↓(②段目の推定:民訴法228条4項による)
・その契約書は真正に成立している

結論として、(今回の場合)原告が被告の押印のある契約書を書証として提出すれば、被告の反証がない限り、その契約書は真正なものとして扱われることになります。

被告の奥さんが実印を持ち出して押印していた場合はどうなるか?

受験勉強では、オートマなどで上記で書いた内容を読んで何となく理解した気になって「終わり」でした。「家族が実印を持ち出した場合はどうなるのだろう?」と気にはなっていましたが、深堀りして調べてみる余裕はありませんでした。

「自由心証主義」の建前においては、書証の真正な成立が認定されても形式的証拠力に留まり、敗訴が確定するわけではありませんが、実務においては契約書などの書証のパワーは絶大で、ほとんど勝敗が決まってしまうそうです。

被告としては、「その実印は自分の妻が持ち出して勝手に押したものだ」と主張し、立証する必要があります。(立証責任は被告にあります)
立証できれば、二段の推定は働かず、契約書は真正に成立していない、と判断されます。
(①段目の推定が破れます)

そうなると、原告の方は、「表見代理の成立」、「日常家事債務にあたる」などということを争点にすることになります。
(こちらは原告のほうに、立証責任があります)
もちろん、妻に資力があれば、妻を被告にする方が早いでしょう。
(最初から実印持ち出しの事情が明らかであれば、妻を被告にして訴え、夫を巻き込んで和解に持ち込む方が貸金の回収がしやすそうです)

特別研修で初めて理解できたことを書いてみました。