司法書士試験 ポイント整理 民事保全法

平成27年度以降の午後の部科目別得点推移
<民訴法> 5→3→4→3→5/5
<民執行> 1→1→1→1→1/1
<民保全> 1→1→1→1→1/1
<司書法> 1→1→1→1→1/1
<供託>  1→2→3→3→3/3
<不登法> 11→13→15→13→10/16
<商登法> 3→4→7→5→6/8

不登法についても、自分としてはもちろん合格年の知識や理解度が最も高かったと思いますが、本番試験の成績は合格年が一番悪いです。
問題との相性、そのときの時間配分(あせり具合?)などに影響され、(成績最上位者クラスは別として)、なかなか実力通りの点数にならない気がします。

そういう意味で、民訴系(特に民事執行法、民事保全法)、司法書士法、供託法は、そんなに成績に差のつく出題がされないので、これらを落とさないことが大事だと思います。

民事保全法は、1時間くらいでオートマプレミアの全記載範囲が読めるので、下記ポイントを骨格として頭に入れながら、試験本番1日前か2日前に、一読すれば対応可能です。
テキストで引用されている条文を六法で参照しながら読めば完璧です。それでもそんなに時間はかかりません。

直前確認ポイント

・保全命令=仮差押命令(カネの問題)+仮処分命令
→ 保全命令に関する重要条文(管轄、申立て方法、立担保要否、送達等)は、仮差押命令と仮処分命令の双方に適用される。

・保全命令の申立てが却下されたときは、債権者は、即時抗告告知から2週間以内)することができる。

保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議・保全取消しの申立てがあった後も、債務者の同意を要しない。

・仮差押命令につき仮差押解放金を定めることが必須。(カネの問題)
 仮処分命令につき仮処分解放金は通常定めない。
 カネで解決できる場合に(債権者の意見を聞いて)定めても良い。

・仮処分命令=係争物に関するもの+仮の地位を定めるもの。

占有移転禁止の仮処分で係争物が不動産の場合、債務者を特定せずに、保全命令を発しても良い。

・保全異議 → 保全命令の適法性に関わる異議
 保全取消し→ 発令後の事情変化により取り消すべしという申立て
 ①本案の訴えの不提起によるもの(発令裁判所。判事補でもOK。)
 ②事情変更によるもの(発令or本案の裁判所。手続きが厳格。)
 ③特別な事情によるもの(発令or本案の裁判所。手続きが厳格。)
  →仮処分のみ申立て可能
  →立担保が必須

抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てに対する裁判については、保全抗告をすることができない。
→ 保全命令の適法性についてすでに2段階の審理をしているため。

・占有移転禁止の仮処分の効力が及ばないのは、債務者の占有を承継しないで、独自の理由で占有を開始した者のうち、仮処分の執行がされたことを知らなかった者だけである。

実際の出題(各肢は略記しています)

平成26年度
ア 仮の地位を定める仮処分は、争いがある権利関係について債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要な時に発することができる。
→ ○(条文のまま)
エ 仮の地位を定める仮処分命令において、仮処分解放金を定めることができる。
→ ×(ちょっと応用力が必要?)
オ 仮の地位を定める仮処分命令に対し保全異議の申立てがあった後、当該仮処分命令の申立てを取り下げるには、債務者の同意を得ることを要する。
→ ×(上記ポイントの通り)

平成27年度
ア 債務者は保全命令に対し、その発令裁判所に保全異議を申し立てることができる。
→ ○
イ 保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得る必要がある。
→ ×(異議を取り下げるのに相手側の同意は不要に決まっています)
オ 仮処分命令の発令裁判所または本案の裁判所は、特別の事情があるときは、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。
→ ○(上記ポイントの通り)

平成28年度
ウ 占有移転禁止の仮処分命令の執行後、その執行を知らないで、債務者の占有を承継した者に対し、当該土地の明け渡しの強制執行をすることができる。
→ ○(上記ポイントの通り)
オ 処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者に当該土地を売っていた場合には、売買による所有権移転登記が仮処分の登記の後にされた場合であっても、仮処分債権者に対して、売買による所有権の取得を対抗することができる。
→ ×(ほとんど不登法の常識問題)

平成29年度
ア 動産の仮差押命令は目的物を特定しないで発することができる。
→ ○(民事執行法の準用)
イ 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るために債務者が供託すべき金額を定めることを要しない。
→ ×(上記ポイントの通り)
オ 保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならないが、口頭弁論を経ないで決定する場合は、理由の要旨を示せば足りる。
→ ○(民事訴訟法の準用)

平成30年度
ア 貸金債権を被保全債権とする仮差押命令は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
→ ○(条文のまま)
オ 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前でも、これをすることができる。
→ ○(条文のまま。密行性の要請。民事執行法と相違。)

平成31年度
イ 仮の地位を定める仮処分命令は、金銭の支払を目的とする債権を保全すべき権利とする場合でなければ、発することができない。
→ ×(オオバツ)
エ 仮の地位を定める仮処分の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
→ ○(上記ポイントの通り)
オ 仮の地位を定める仮処分命令は、債務者だけでなく、債権者にも送達しなければならない。
→ ○