司法書士・行政書士試験 民法 多数当事者の債権・債務

数年に1回の出題ですが軽視できません

民法改正後の最近では、司法書士試験では令和4年の午前の部第16問に、行政書士試験では、令和5年の問題30に出題されています。
苦手だからと言って捨てるわけにはいきません。民法においては「しっかり理解できている項目」を1つずつ増やしていくことが対策となります。
私が司法書士試験に合格した令和元年までが(旧)民法で、翌令和2年から改正民法となり、改正前後の違いがものすごく気になったものでしたが、今となっては、新民法のすっきりとした規定だけを勉強していくべきだと思います。

1.連帯債権

AとBが、Cに対する100万円の連帯債権者である場合(AとBそれぞれに分与されるべき利益50万円がある)
→ AとBは各自がCに100万円を請求でき、CはAとBのいずれかに100万円を払えば免責される(民432条)

①免除の絶対効:AがCに免除した場合、BはCに、Aの持分50万円分は請求できない(民433条)
②更改の絶対効:AとCが更改した場合、BはCに、Aの持分50万円分は請求できない(民433条)
③相殺の絶対効:AとCが相殺した場合、Bの債権も消滅。(AはBに、利益分50万円を分与すべき)(民434条)
④混同の絶対効:A→Cと混同した場合、Bの債権も消滅。(CはBに、利益分50万円を分与すべき)(民435条)

2.連帯債務

債権者Aに対して、BとCが100万円の連帯債務者である場合(BとCに各々50万円の負担部分がある)
→ Aは、BまたはCの1人に対し、100万円全額または一部の請求ができる(民436条)

⑤相対効の原則(民437条、441条)
ー1 Bの債務が無効であっても、Cの債務には影響しない
-2 Bが債務を承認しても、Cの債務の消滅時効は更新しない
-3 A→Bに裁判上の請求をしても、Cの債務の消滅時効は更新しない(旧民法では「請求の絶対効」でしたが改正)
ー4 AがBの債務を免除しても、Cの債務には影響しない。(旧民法では「免除は絶対効」でしたが改正)

⑥更改の絶対効:AとBが更改した場合、Cの債務も消滅。BはCに50万円を求償できる。(民438条、442条)
⑦相殺の絶対効:AとBが相殺した場合、Cの債務も消滅。BはCに50万円を求償できる。(民439条、442条)
→ Bが相殺をしない間は、Cは50万円(Bの負担分)の債務の履行を拒むことができる
⑧混同の絶対効:A→Bに混同した場合、Cの債務も消滅。BはCに50万円を求償できる。(民440条、442条)
⑨免除された連帯債務者に他の債務者が求償できる(民442条)
→ Bが債務を免除された場合、CはAに100万円を支払わなければならないが、Bに50万円を求償できる。

実際の出題

司法書士試験 令和4年 午前の部

ア 〇 連帯債権の定義(民432条)そのまま
イ 〇 ポイント④混同の絶対効
ウ ✖ ポイント⑦相殺は援用できず、履行を拒める、となった
エ ✖ 民442条 負担部分は「割合」で求償できる
オ 〇 ポイント⑨免除は相対効となったが、負担部分は求償できる

行政書士試験 令和5年

ア 効力が生じる ポイント⑧混同の絶対効
イ 効力が生じる 一人が弁済すれば連帯債務は消滅する
ウ 効力が生じる ポイント⑦相殺の絶対効
エ 効力が生じない ポイント⑤相対効の原則(改正民法では、請求は相対効に)
オ 効力は生じない ポイント⑤相対効の原則(改正民法では、免除は相対効に)