令和8年度司法書士試験より~第4問民法 後見・保佐・補助~

令和8年度司法書士試験、民法第4問は、後見・保佐・補助に関する問題でした。
正しいものの組合せを選ぶ問題で、正解は5(エ・オ)です。
この問題は、条文を素直に読めていれば、すべての選択肢を判断できる問題です。
民法の学習では、テキストの解説を読むだけでなく、学習のたびに条文そのものに何度も目をとおすことが基本です。

なお、後見制度は改正が予定されていますが、今年度の行政書士試験をはじめ、当面は現行制度からの出題が見込まれます。
現行制度の条文をしっかり押さえておきましょう。

ア 家庭裁判所は、本人の請求によって後見開始の審判をすることができない。
→ ✖(本人も請求できる)

民法7条(後見開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

民法11条(保佐開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

民法15条(補助開始の審判;一部略記)
①精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
②本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 ←補助だけの規定
③補助開始の審判は、補助人の同意を要する旨の審判又は補助人に代理権を付与する旨の審判とともにしなければならない。

後見も保佐も補助も、請求権者は「本人、配偶者、4親等内の親族、後見・保佐・補助関係者、検察官」で共通しています。

事理を弁識する能力を欠く常況にある本人が請求できるのか、と疑問に思うかもしれません。
しかし、条文は請求権者の最初に「本人」を挙げています。
本人が一時的に判断能力を回復しているときは、本人自身が請求できます。

イ 家庭裁判所は、後見開始の審判をする場合であっても、本人の生活の状況等を考慮し、成年後見人を付さないことができる。
→ ✖(後見開始の審判をするときは、必ず成年後見人を選任する)

民法843条(成年後見人の選任;一部略記)
①家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
③成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
④成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

1項は「選任する」であって、「選任することができる」ではありません。
保護者である成年後見人がいなければ、後見開始の審判をした意味がないからです。

選択肢の「本人の生活の状況等を考慮し」は4項から持ってきた言い回しですが、4項は「誰を成年後見人に選ぶか」の考慮事情です。
「成年後見人を付けるかどうか」の話ではありません。

なお、3項により成年後見人は複数選任でき、4項かっこ書きから法人も成年後見人になれます。

ウ 家庭裁判所は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について、後見開始の審判をすることができる。
→ ✖(「著しく不十分」は保佐の対象)

もう一度、7条・11条・15条の書き出しを見てください。
・後見:事理を弁識する能力を「欠く常況にある者」
・保佐:事理を弁識する能力が「著しく不十分である者」
・補助:事理を弁識する能力が「不十分である者」

この3段階は基本中の基本です。
また、11条ただし書・15条1項ただし書のとおり、より重い類型にあたる方について、保佐や補助の審判をすることはできません。

エ 家庭裁判所は、本人の同意がない場合には、本人以外の者の請求により、本人が特定の法律行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができない。
→ 〇(同意権付与の審判にも本人の同意が必要)

民法17条2項
本人以外の者の請求により前項の審判(補助人の同意を要する旨の審判)をするには、本人の同意がなければならない。

15条2項のとおり、本人以外の者の請求で補助開始の審判をするには、本人の同意が必要です。
これは補助だけの規定で、後見・保佐にはありません。
補助の対象となる方は判断能力が相当程度残っているため、本人の自己決定を尊重する趣旨です。

選択肢エが問うのは、補助開始の審判ではなく同意権付与の審判ですが、17条2項に同じ趣旨の規定があります。

さらに15条3項により、補助開始の審判は、同意権付与か代理権付与の審判とセットでしなければなりません。
補助開始の審判だけでは、補助人に何の権限もないからです。
そして、いずれの審判も、本人以外の者が請求するときは本人の同意が必要です。
「補助は、どの場面でも本人の同意が必要」と覚えておきましょう。

オ 家庭裁判所は、後見開始の審判をする場合において、本人が保佐開始の審判を受けた者であるときは、当該保佐開始の審判を取り消さなければならない。
→ 〇(家庭裁判所は従前の審判を取り消さなければならない)

民法19条(審判相互の関係)
①後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
②前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

一人の方について後見と保佐などが重なると、誰にどんな権限があるのか分からなくなります。
そこで、重複しないように整理する規定です。

「取り消すことができる」ではなく「取り消さなければならない」です。
請求を待たず、家庭裁判所が職権で取り消します。

以上により、エとオが正しく、正解は5です。

「選任する」か「選任することができる」か。
「取り消さなければならない」か「取り消すことができる」か。
こうした語尾の違いは、条文に何度も目をとおしているうちに自然と身につきます。
民法の学習では、条文を読むことを習慣にしましょう!