行政書士試験における会社法対策(1)
行政書士試験での会社法の出題
4問(+商法から1問)出題されています。近年、持分会社からの出題は無く、すべて株式会社からです。
令和5年度 設立、種類株式、役員等の責任、役員等
令和4年度 設立、株式の売渡請求、株主総会、役員等
令和3年度 設立、株式の質入れ、役員等、剰余金の配当
令和2年度 設立、自己株式の取得、株主総会、公開会社・大会社の特徴
令和元年度 設立、株主の権利、取締役会、株主・株主総会
平成30年 設立、譲渡制限株式、役員等、剰余金の配当
項目を絞って学習し、2問の正解を目指そう
行政書士受験では、「国家試験受験のためのよく分かる行政法、民法、憲法、会社法」を使っていましたが、会社法は一読したものの、4問しか出ないのに、覚えることが膨大で途方にくれたことを思い出します。私は平成22年度合格ですが、告白すると、会社法全般や民法の根抵当権などは全く分かっていなかったように思います。
実際、行政法と民法に最も集中して、行政法8~9割、民法7割、憲法7割、会社法その他一般知識等は5割の得点を目指す勉強方法が、効率が良かったように思います。
(司法書士試験対策では、会社法、商業登記法、法人法のほぼ全部の範囲を細かいところまでがっつり学習し、8~9割の得点を目指す必要ありです。)
行政書士試験対策(1)役員等と機関設計
上記出題項目を見ると、学習すべきは、優先順位の順に、株式会社の設立、機関(役員等、株主総会、取締役会)、株式の制度、剰余金の配当となります。
今回は、そのうち役員等と機関設計を簡単にまとめてみます。
①役員等
・取締役(必置機関) → 法人は不可。持分会社の社員は法人可であるが行政書士試験には出ない?
・監査役(取締役の業務を監視する)
・会計参与(公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人)→取締役と共同し、計算書類を作成する。
・会計監査人(公認会計士、監査法人)→計算書類を監査する。「役員」ではない。だから役員「等」である。
②機関設計(代表的なパターンのみ)
(1)取締役(+株主総会)
・私たちのお客さんの大半はこの形態です。(株式会社のほかには、合同会社の場合も多い)
・取締役が業務を執行し、株主総会が、取締役の業務を監視します。
・取締役会が無い場合、原則、取締役=代表取締役です。取締役の中から、定款、株主総会、互選で代表取締役を定めることもできます。
(2)取締役会+監査役(+株主総会)
・公開会社は取締役会必置です。
・取締役会を置く場合、監査役(監視役)を置く必要があります。(非公開会社は会計参与でもOK)
・取締役会(取締役)が業務を執行し、監査役が取締役の業務を監視します。
・取締役会の決議で、代表取締役を選定します。
(3)取締役会+監査役(会)+会計監査人
・大会社は会計監査人必置です。
・会計監査人を置いた場合、監査役も置く必要があります。(会計監査人の監視役として)
・監査役会を置いた場合、その「半数以上」は、社外監査役であることが必要です。
(4)上記まででその他注意事項
・会計参与は、原則、(1)~(3)、(5)(6)の全てのパターンで、設置してもしなくても自由です。
・役員等は株主総会決議で選任されます。会計監査人は議決が無い場合「みなし再任」となります。
(5)指名委員会等設置会社
取締役会→指名委員会、監査委員会、報酬委員会、会計監査人、(代表)執行役
・取締役会が各委員を選定(取締役と兼任)します。
・各委員会の委員の「過半数」は、社外取締役であることが必要です。
・会計監査人必置です。
・(代表)執行役が業務を執行します。取締役を兼任してもしなくても良いです。
(6)監査等委員会設置会社
取締役会、監査等委員会、会計監査人
・監査等委員である取締役(3人以上で過半数は社外取締役)とそれ以外の取締役がいます。
(監査等委員である取締役は、取締役会でも発言権、議決権があることが特徴)
・会計監査人必置です。
・取締役会で、監査等委員でない取締役の中から、代表取締役を選定します。
実際の出題
令和5年問題37
ウ 〇 ← ②(6)
令和5年問題40
1 〇 ← ②(3)(4)(5)(6)
2 〇 ← ①
3 〇 ← ②(4)
4 〇 ← ①
5 ✖ 役員等には、不正を発見した場合、監視役(監査役等)に報告する義務ありです。
令和4年問題40
ア ✖ ← ②(4)
イ ✖ ← ②(3)
ウ 〇 ← ②(4)
エ 〇 ← ①
オ ✖ 取締役会に出席義務があるのは、原則、取締役と監査役です。
令和3年問題39
ア ✖ 政府が目指しているのは、「社外取締役」の普及である
イ 〇 ← ②(3)
ウ ✖ 政府は「社外取締役の普及」を目指しているが、そのような規定はありません
エ 〇 ← ②(6)
オ 〇 ← ②(5)
令和元年問題40
3 ✖ ← ②(1)
世の中の多くの会社(私のお客さん)が、株主=取締役(代表取締役)=お一人です。
誤っているものを選ぶのですから、実は即答できる簡単な問題です。
平成30年問題39
1 〇 その通りです。
2 〇 ← ②(6)
3 ✖ ← ②全般 政府は「社外取締役の普及」を目指しているが、そのような規定はありません。
4 〇 特別取締役の規定は少し細かいです(司法書士試験レベル)
5 〇 少し細かいですが、役員等の責任はときどき出題されます。余裕があったら対策?