行政書士試験における会社法対策(2)株式会社の設立
「株式会社の設立」は過去6年間毎年出題
出題される可能性が高い事項は、積極的に対策しましょう!
。。。とは言ったものの、株式会社の設立手続は、結構ボリュームもあり、深堀りすればいくらでも細かい規定もでてきます。
(司法書士試験では登記手続きを加えて、そのすべてを勉強する必要がありますが)行政書士試験では、どこまで勉強すれば良いのかは、なかなか難しい問題だと思います。
過去問をみると、結構、細かい規定も出題されている選択肢もあって、なかなかポイントを絞るのは難しいのですが、まずは下記の重要ポイントから身に付けていきましょう。
「株式会社の設立」において行政書士試験で必要なポイント
①発起設立と募集設立
発起設立:発起人だけが株主となる設立方法
募集設立:発起人の他に、株主となる人(法人も可)を募集する設立方法
→ いずれにおいても、発起人は必ず1株以上の株主となることを要する
→ 出資の履行で株主となる権利を得る。その権利の譲渡はできるが、成立後の株式会社に対抗することはできない。
②最初の定款の絶対的記載事項(会27条→定款作成は行政書士業務でもあります)
1)目的
2)商号
3)本店所在地(市区町村まででも良い)
4)設立に際して出資される財産の価額(または最低額)
5)発起人の氏名・住所
→ 最初の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じない(会30条)
→ 「発行可能株式総数」を定款に定めなかったときは、発起人全員の同意で定める必要あり
募集設立において、発起人が定めなかったときは、創立総会で定める(会37、98条)
③その他設立時の決定事項
1)発行する株式数、発起人の株式数、払込金額、資本金の額、資本準備金の額等
→ お金と株式のことについては(募集設立においても)発起人全員の同意で決定する
→ 「お金の問題で発起人全員が一致しないなら、株式会社なんて、つくるな!」という意味合い
2)設立時役員(取締役、監査役等)の選任
→ 発起設立:発起人の議決権(持ち株割合)の過半数
→ 募集設立:創立総会決議
→ 役員(取締役等)は、発起人・募集株式引受人によらず、多く出資して株式をたくさん保有する者の意向を重視して選任する、という意味合い
④変態設立事項(定款に記載する特殊な取り決め)と検査役の検査
1)現物出資(金銭以外の出資):発起人のみ可能
2)財産引受(会社が設立後に財産を譲り受ける契約)
3)発起人の受ける報酬
4)(省略)
→ 現物出資等がある場合、原則、裁判所に検査役の選任の申立てをしなければならない(会33条)
→ 変態設立事項の定めは、不正等が発生しやすい取り決めだからである
(現物出資で100万円の土地を1000万円の価値として出資するなど)
→ 現物出資等の価額の相当性について、弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けた場合は、上記検査役の選任申立てを要しない
⑤設立時取締役・監査役等の権限
・設立時取締役等の調査(出資価額の相当性、出資の履行の完了確認、等)
・設立時代表取締役の選定(取締役会設置会社の場合のみ)
→ その他の会社設立に関わる事項については、取締役ではなく、「発起人」がやる!
→ 設立時取締役・監査役の権限(やるべきこと・できること)は限られている!
⑥会社設立手続上の任務怠慢や、会社不成立時等の、責任
1)設立手続の任務を怠ったときの責任
→ 発起人、設立時取締役・設立時監査役(⑤の調査に関してのもの)が連帯して負う
2)会社が成立しなかったときの責任
→ 発起人が連帯して責任を負い、設立に関して支出した費用を負担する(会56条)
→ いずれの責任も「総株主の同意」があれば免除できる
実際の出題において
令和5年度
ア 〇 ③関連だが、少し細かい知識
イ 〇 ③2)
ウ 〇 前回の機関設計の知識
エ ✖ 発起人が取締役になれないという規定はありません
オ ✖ ⑤ 設立時取締役の権限は限られています
令和4年度
ア 〇 ②
イ ✖ ②
ウ ✖ ②発起人が定めなかった場合、創立総会決議で定める
エ 〇 ② 創立総会(株主全員参加できる会議)では定款変更が可能
オ 〇 公開会社では、発行済株式数×4≧発行可能株式総数となる必要あり
→ 公開会社では、株式の新規発行の余地を大きくできない(大量の株をすぐに発行できない)と覚えましょう
→ オの日本語の文章は何度読んでも分かりにくいです。私も本番では間違えそうです。
令和3年度
1 〇 ⑥ 設立時取締役も出資価額の相当性の調査をしているので連帯して責任を負います
2 〇 発起人張本人が不正をはたらけば当然に責任を負います
3 〇 ⑥1)
4 ✖ 上記ポイント範囲外。役員等の第三者に対する責任は、「悪意または重過失があったときに」発生します。(会429条)
→ 一方で、民法上の不法行為で、第三者に損害を与えたときは、故意または過失ありで、損害賠償責任が生じます。(民709条)
よって、民法で責任を問える場合は、民法上で不法行為責任を追及すればよく、民法で責任を問えない場合に、会社法上の特別な責任を負わせる立法趣旨とされています。
(民法では問えない損害賠償責任を、特別に、負わせるのだから、要件は悪意(故意)または重過失としている)
5 〇 ⑥連帯して責任を負う=連帯債務者となります
令和2年度
ア 〇 ① 基本です
イ ✖ 私も判断できません。(判断しない判断ができるかです)
ウ 〇 ④
エ ✖ ⑥ 会社不成立の責任は発起人が負います
オ ✖ 司法書士試験では、設立登記の添付書面として頻出です
令和元年度
ア 〇 ②
イ 〇 ①関連、少し細かい知識です
ウ 〇 ①
エ ✖ 設立時募集株式の引受人は、期日に出資履行をしない場合、問答無用で失権します。発起人は履行の催告がもらえます。
オ ✖ ④現物出資は発起人しかできません
平成30年度
ア ✖ ⑥総株主の同意で免除できます
→ 被害者は他の株主だからです。当然に、第三者に対する責任は総株主の同意では免除できません。
イ ✖ ⑥総株主の同意で免除できます(被害者は他の株主だからです)
ウ 〇 ⑥
エ 〇 これは第三者に対する責任です。令和3年度選択肢4の解説を参照ください。
オ 〇 ⑥