県外への本店移転登記 移転先登記申請書での「登記すべき事項」

不動産登記の実務をする際には、オートマなどの受験用テキストを振り返って確認することはほとんどありません。
どちらかというと、登記原因証明情報の作り方や委任状などの中身の書き方(受験ではあまり重視されない)を確認する必要があり、実務書は結構の量を購入しなければなりません。

商業登記実務においても、設立登記における定款の書き方や、その他、株主総会議事録、取締役会議事録、株主リストの書き方を確認するために、登記業務ソフトや実務書は必須ですが、あわせて、そもそもの登記申請書の書き方や添付書類を確認するために、実務書のバイブル「商業登記ハンドブック(最新第4版)」とともに、「オートマシステム(最新第8版)」も大活躍しています。

なんといっても、法改正などに一番早く対応するのは受験用テキストなので、オートマ会社法・商登法は、これからも最新版が出るたびに買い続けなければならないのか?と心配(?)になっています。

今回、実務でご依頼を受けて確認した事項が、管轄外(A県→B県など)に本店を移転した場合の、移転先(B県)宛て登記申請書での「登記すべき事項」です。

登記申請書例(商業登記ハンドブック第4版)

商号 〇株式会社
本店 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号(新本店)
登記の事由   本店移転
登記すべき事項 別紙のとおり
登録免許税   金3万円
添付書類    委任状1通

別紙の内容(略記しています)
商号  〇株式会社
本店  〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
公告をする方法 〇〇・・・
目的 1  〇〇・・・
   2  〇〇・・・
発行可能株式総数 〇〇株
発行済株式の総数 〇〇株
資本金の額    金〇〇円
株式の譲渡制限に関する規定 〇〇・・・
役員に関する事項、資格、氏名、原因年月日(就任日等)
取締役会設置会社
監査役設置会社
登記記録に関する事項
〇年〇月〇日 △県△市△町△丁目△番△号から本店移転

登記申請書例(オートマシステム第8版)

商号 〇株式会社
本店 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号(新本店)
登記の事由   本店移転
登記すべき事項  〇年〇月〇日 △県△市△町△丁目△番△号から本店移転
登録免許税   金3万円
添付書類    委任状1通

平成29.7.6民商110号、111号についての説明

商業登記ハンドブック
平29・7・6民商110号回答によれば、(別紙の内容のうち)「登記記録に関する事項」が正しく入力されていれば、登記申請は却下されないこととなる
→ なんとも微妙な書き方ですね。

オートマシステム
登記すべき事項には「 〇年〇月〇日 △県△市△町△丁目△番△号から本店移転 とのみ記載すれば足ります。(平29・7・6民商111)
(途中省略)カンタンお手軽ですね。
→ 断言されています。

自分の受験勉強の経験では、商業登記ハンドブックが示す「登記すべき事項」が常識になっていて、記述式の練習でも、「書く内容が多すぎるー」と涙を流しながら(?)上記別紙の内容を書きなぐった気がしますが、今後出題されたら、オートマでの書き方でOKということですね。
オートマの山本先生も、旧版からの改訂の際に、同じ意味で、「カンタンお手軽ですね。」と書かれたと思います。

最後に蛇足

受験勉強で、「本店移転は3万円」と呪文のように覚えていたせいで、県外本店移転登記申請の見積依頼を頂いたとき、「登録免許税3万円」とのみ書いてしまったことがあります。実際は、移転元申請で3万円、移転先申請で3万円の合計6万円必要です。商業登記ハンドブックやオートマで確認してようやく気付いて、あわてて訂正させて頂いたことがあります。恥ずかしいー。