法定相続情報証明の申出→被相続人の住民票除票の提出が必須?

相続登記申請の際、被相続人の登記簿上の住所=死亡時の本籍地の場合、被相続人の住所証明情報の提供は不要ですが、登記申請と併せて法定相続情報証明の申出をする場合は、被相続人の住民票除票の提供は必要と思われます。
そう考えた経緯を紹介します。

売買等の所有権移転の売主の本人確認方法

登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合、所有権移転登記をする前に必ず住所変更登記をする必要があります。
登記簿上の住所=現在の住所としたうえで、
登記簿上の住所氏名=①登記書類に実印を押印(本人にしか押せないはず)+②印鑑証明書(住所氏名記載あり)を提出+③権利証・登記識別情報を提出(本人しか持ち得ない)+④司法書士の決済での免許証等による本人確認
と、所有権の名義を移転させるためには、何重にもわたる本人確認の仕組みを通過する必要があります。

相続による所有権移転の被相続人の本人確認方法

登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合でも、住所変更登記をする必要はありません。(司法書士試験でも基本知識)
一方で、登記簿上の名義人=死亡した被相続人の同一性は、きちんとチェックされます。(司法書士試験ではあまり取り上げない)

登記簿上の住所 「〇県〇市甲乙3番地2」とします。
「死亡時の本籍地」(原則として被相続人の出生~死亡の戸籍を提出)
1)△県△市丙丁△番(住所地と全く違う場合)
→ 住民票除票(または戸籍の附票)を提出し、当人が〇県〇市甲乙3番地2に住んでいたことを証明する
2)〇県〇市甲乙3番地(番地までが本籍地となっている場合)
→ この場合も住民票除票等の提供は省略できません。
  当人が〇県〇市甲乙3番地2に住んでいたことを証明する必要があります。
3)〇県〇市甲乙350番地(住居表示がされている場合;戸籍は地番です)
→ この場合も住民票除票等の提供は省略できません。
  登記所は住居表示を調べてくれません。(役所が違うので)
  甲乙3番地2(住居表示:住所)=甲乙350番地(地番:戸籍)は、こちらで証明する必要があります。
4)〇県〇市甲乙3番地2
→ けっこう少ないケースですが、登記簿上の住所=最後の住所=死亡時の本籍地ということがあります。
  この場合は、登記簿上の名義人=死亡した被相続人は明らかとされ、住民票除票等の提供は不要です。

法定相続情報証明の申出の際には、住民票除票の提出は必須(と思います)

先日、上記4)のケースで相続登記の申請をしようとした際、「今回は住民票除票が要らなかった、ラッキー」と思っていたのですが、併せて「法定相続情報一覧図」の写しの交付の申請をしようとして、ふと考え込んでしまいました。
相続登記申請: 「登記簿上の住所氏名」との同一性を確認する(そのための資料の提供を要する)
一方で、法定相続情報証明制度は、提出された資料によって、一から、被相続人の相続関係を証明する一覧図を作成するものです。
・戸籍謄本の束 → 被相続人の死亡日、最後の本籍、相続人の氏名等
・住民票除票  → 被相続人の最後の住所

よって、住民票除票がなければ、被相続人の最後の住所を証明するものがない!
あわてて市役所に走り、住民票除票を取得してから、登記所に添付書面として提出しました。

司法書士試験では、余計な添付書面を記載すれば減点ですが、実務では必要と考えたものは添付しておく方が良いと思います。