令和6年度認定考査解答例
認定考査対策には、特別研修やテキストの内容を振り返りながら過去問を解く、のが一番ですが、解答例をなかなか見つけることはできません。
そこで、令和6年度から1年ずつさかのぼって、解答例を提供します。
もちろん模範解答であるはずはなく、要点のみの解答ですが、合格点は取れている、と思います。
第1問の問題文の登場人物
「本件ランプ」(時価120万円)に関する争い
X(原告):本件ランプをAに仮装譲渡したが、所有権は自分にあるものとして返還を請求している。
A:本件ランプをXから受領し、Yに転売した。現在は、所在をくらましている。
Y(被告):現在、本件ランプを占有している。
第1問の問題文における原告・被告の主な主張
原告Xの主張
1)本件ランプの所有者は私である。
2)業績悪化で差押えを免れる目的で、Aに仮装売却をした。
3)Yは、上記仮装売却の事情を知った上で、Aから本件ランプを買ったはずだ。
被告Yの主張
1)本件ランプの所有者は私である。
2)私はAから本件ランプを買った。
解答例
第1問
(1)訴訟物と個数「所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権、1個」
(2)Xの請求の趣旨「Yは、Xに対し、本件ランプを引き渡せ」
(3)原告Xが主張すべき請求原因の主要事実(所有権に基づく動産引渡請求)
① Xは、本件ランプをもと所有していた。
② Yは、本件ランプを占有している。
(4)被告Yが主張すべき抗弁の主要事実
1.Xは売買により、所有権を喪失しているとの抗弁
1⃣ Xは、令和5年10月18日、Aに本件ランプを売った。
2.Yは、即時取得により本件ランプの所有権を取得し、Xは所有権を喪失しているとの抗弁
⓵ YとAは、令和6年5月15日、本件ランプの売買契約をした。
⓶ Yは、同日、⓵の契約に基づき、Aから本件ランプの引き渡しを受けた。
(5)原告Xが主張すべき再抗弁の主要事実
1.(4)の1.に対して、売買は虚偽表示であるとの再抗弁
❶ XとAは、1⃣の売買の際、いずれも売買する意思がないのに、その意思があるもののように仮装することに合意した。
2.(4)の2.に対して、Yは、Aに所有権がないことにつき悪意であった(即時取得は成立しない)との抗弁
①’ Yは、⓵に際して、Aに所有権が無いことを知っていた。
(6)Yの「XA間の仮装譲渡の事実など知る由もない」という主張の位置づけについて
(5)の1.に対する再々抗弁となる。
虚偽表示は、当事者間では無効であるが、善意の第三者にはその無効を主張することはできない(民94条2項)。
よって、Yは「善意の第三者であること」を主張することができるが、善意については、判例では、主張者Yが主張証明責任を負うとされている。
(7)Xが即時取得の成立についてYの有過失を主張して争う場合、以下の①②は、Yが「Aを本件ランプの所有者であること」を信じたことにつき過失があること、の評価根拠事実になるか?
①本件ランプは、YがAから引き渡しを受けた際、時価120万円を下らないものであった事実
→評価根拠事実となる。120万円のものを40万円で売ることは、Aが本当の所有者である場合は、考えにくいから。
②Yは、令和6年6月9日、Aが困窮していることを知った事実
→評価根拠事実とならない。売買をした日(令和6年5月15日)より後の事実だから。
第2問の設例
1.Aは、令和5年9月10日、Yに50万円を貸しつけた。無利子、返還期限を同年12月10日と定めた。
2.Yは、返還期日になっても、返済をしなかった。Aの督促にも応じなかった。
3.Aは、令和6年2月25日、上記Yに対する債権を、Xに30万円で譲渡した。同日、AはYに対し債権譲渡通知をした。
4.Xは、債権回収について、司法書士法人Pの司法書士Qに相談した。
5.QはXの訴訟代理人として、50万円の返還をYに求める訴えを簡易裁判所に提起した。
解答例
(1)訴訟物と個数「AY間の消費貸借契約に基づく貸金返還請求権、1個」
(2)原告Xが主張すべき請求原因の主要事実
① Aは、令和5年9月10日、Yに対し、無利息、弁済期を令和5年12月10日と定めて、50万円を貸しつけた。
② 令和5年12月10日は到来した。
③ Aは、令和6年2月25日、①の債権をXに売った。
(3)司法書士Qは、Xの代理人として、本件訴訟の勝訴判決による強制執行の申立てをすることはできない。
司法書士は、少額訴訟債権執行を除いて、民事執行に関する代理権限を有しないから。
(4)司法書士Qは、自分が代理した簡易裁判所での訴訟について、あらためて控訴に関する特別の委任を受ければ、控訴の提起をすることができる。
ただし、控訴状に控訴審における攻撃防御方法を記載することはできない。
地方裁判所における審理であり、簡易裁判所訴訟代理権だけをもつ司法書士の権限を超えるから。
第3問
(1)認定司法書士Rは、信頼できないと感じる依頼人Yからの、訴訟代理人となってほしい旨の依頼を拒むことができるか?
→ 拒むことができる。簡裁訴訟代理業務について、司法書士に受任義務はないから。
(2)認定司法書士Sは、第2問の司法書士法人Pの社員であったが、第2問の訴訟には関与していなかった。司法書士Sはその司法書士法人Pを退社後、Yから本件訴訟の代理人となってほしいとの相談を受けた。司法書士Sは、Yの訴訟代理人となることはできるか?
→ 訴訟代理人となることができる。(少し自信ありません)
自ら関与していなかった事件については、司法書士法人脱退後は、原則、相手方の訴訟代理人になることはできる。(と思いますが、実際は慎重になったほうが良いと思います。自分の意見)