司法書士試験過去問分析(1)民事保全法

はじめに

司法書士試験に合格してから5年が経過しました。
すっかり内容を忘れてしまう、ということはなく、不登法や会社法・商登法については、実務の中で実力はさらについていきますし(これでお金を頂くのだから当然です)、法律相談対応や民事訴訟対応・特別研修などにおいて、民法や民事訴訟法関連の知識も深まっていきます。
そして現在、ご縁を頂いて、ある司法書士試験予備校の、司法書士試験対策講義や問題作成などにも携わらせて頂いています。
ということで、まだまだ、司法書士試験そのものにも直接的に触れていますので、司法書士試験対策のポイントについても発信したいと思います。

内容としては、司法書士試験の項目・分野を一つずつ取り上げ、まとめて頭に入れるべきポイント(A4、1枚くらいの分量)と過去問の中でどのように問われているかを提示しようと思っています。

なぜ、第1回がマイナー科目の民事保全法?と言われそうですが、民事保全法は科目全体が1回でまとまるのでスタートしやすい、というそれだけの理由です。

民事保全法のまとめポイント

1)民事保全手続き:民事訴訟の本案の権利の実現を保全するためのもの
  債権者 → 申立て → 発令裁判所 → 保全命令 → 債務者(債権者にも送達)
  ※本案の裁判で勝訴したときに債権回収できるように、事前に債務者の財産等を保全しておく
  (債権者(原告) → 本案訴え提起 → 債務者(被告))
  ・仮差押え命令(お金のトラブル)
  ・仮処分命令(係争物に関するもの と 仮の地位を定めるものもの)
  → 上記をあわせて「保全命令」という
    ※申立ては、保全すべき権利・保全の必要性を明らかにして行う(疎明でよい)
    ※裁判は、口頭弁論を経ないですることができる(民保3条)
     → 急迫の場合、裁判長が発することができる
     → 口頭弁論を経ない場合、決定等の理由の要旨を示せば足りる
    ※保全命令は、当事者(債権者・債務者)に送達しなければならない(民保17条)

2)債権者の保全命令の申立てが却下されたときは、債権者は、即時抗告(告知から2週間以内)できる

3)保全執行は、保全命令の債務者への送達前でも、することができる(民保43条3項)

4)保全命令の申立ての取下げには、債務者の保全異議・保全取消の申立て後も、債務者の同意は不要(民事訴訟との相違点)

5)仮差押え命令 → 仮差押解放金を定めることが必要
  仮処分命令  → 債権者の意見を聞いて、仮処分解放金を定めることができる

6)債務者の異議等
  ・保全異議(保全命令は違法だ!)→保全命令発令裁判所へ
  ・保全取消し(事情が変わったので取り消して!)
   a)本案の訴えの不提起によるもの(発令裁判所、判事補OK)
   b)事情変更によるもの(発令or本案の裁判所)
   c)特別な事情によるもの(発令or本案の裁判所)
     → 仮処分命令に対してのみ申立て可、担保を立てることが必須

7)保全命令→保全異議→裁判→保全抗告→保全命令→保全異議→裁判
  この裁判に対する保全抗告はできない(民事保全手続きの裁判は2審制)

8)占有移転禁止の仮処分で係争物が不動産の場合、債務者を特定せずに保全命令を発することができる(占有屋対策)

9)占有移転禁止の仮処分の効力が及ばない者
  →債務者の占有を承継せず、独自の理由で占有を開始し、仮処分執行を知らなかった者(だけ)

司法書士試験過去問での出題(過去5年間)

令和5年度
ア 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
→ ○ ポイント1)
イ 裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときは、仮処分命令において仮処分解放金の額を定めなければならない。
→ ✖ ポイント5)
エ 保全命令の申立てについて、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
→ ○ ポイント1)
オ 保全命令は、債権者にも送達しなければならない。
→ ○ ポイント1)

令和4年度
イ 占有移転禁止の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。
→ ✖ ポイント1)
ウ 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。
→ ○ ポイント5)
エ 仮差押えの執行は、仮差押命令が債務者に送達される前であっても、することができる。
→ ○ ポイント3)

令和3年度
※令和3年度は、上記まとめポイントだけで正誤判断できる選択肢の出題は無し

令和2年度
ア 保全命令に対しては,債務者は,その命令を発した裁判所に保全抗告をすることができる。
→ ✖ ポイント2)、6)
イ 占有移転禁止の仮処分命令については,係争物が動産である場合であっても,その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは,裁判所は,債務者を特定しないで,これを発することができる。
→ ✖ ポイント8)
オ 保全命令の申立てを取り下げるには,保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても,債務者の同意を得ることを要しない。
→ ○ ポイント4)

平成31年度
イ 仮の地位を定める仮処分命令は、金銭の支払を目的とする債権を保全すべき権利とする場合でなければ、発することができない。
→ ✖ ポイント1)
ウ 仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論の期日を経ない場合には、発することができない。
→ ✖ ポイント1)
エ 仮の地位を定める仮処分命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
→ ○ ポイント2)
オ 仮の地位を定める仮処分命令は、債務者だけでなく、債権者にも送達しなければならない。
→ ○ ポイント1)