休眠?根抵当権の抹消登記

甲建物(数値は、実際と変えています)
甲区
2 所有権移転
  原因 平成5年〇月〇日相続
  所有者 A
乙区
1 根抵当権設定
  原因 昭和30年〇月〇日手形取引契約
     同日設定
  極度額 25万円
  債務者 B株式会社
  根抵当権者 C銀行

Aさんより、乙区1番の根抵当権の抹消登記手続きのご依頼を頂きました。
「根抵当権が付いたままだと、将来取り壊しもできないのではないか?」と心配されたためです。

「50歳代の私でも、自分の生まれる10年以上も前の根抵当権か!!」と思いました。
債務者のB株式会社は現在存在せず、Aさんも事情は全く知らないとのこと。

根抵当権者のC銀行がどうなったか調べてみました。
C銀行→(合併)→D銀行→(合併)→E銀行→(事業譲渡・解散)→F銀行(現存都市銀行)

「合併の場合は後継会社となるが事業譲渡のときはどうなるの?」という疑問はありますが、登記義務者が「行方不明」ではないので、不動産登記法70条3項後段の方法は使えないことが分かりました。(使えたとしても、Aさんに25万円の供託をお願いすることはできないと思います)

おそらく、C銀行時代に抹消登記申請をAさんの前主が怠った、というのが真相でしょうから、F銀行から抹消登記申請手続きの協力を得ることは難しいですし、裁判によって登記手続きをせよとの判決を得ることも、なおさら現実的ではありません。困りました。

結論

Aさんは、今後甲建物を売却したり、担保に供したりすることはなく、取り壊しの心配だけされていたので、根抵当権設定登記はそのまま放置することにしました。
取り壊して滅失登記申請の際、根抵当権設定登記について事情説明は要しますが、滅失登記は可能とのことだからです。(土地家屋調査士の先生に確認しました。)
今回は建物だから上記の考え方でしたが、土地の場合は何とか抹消登記しなければならなかったように思います。

実態上はすでに無いことが明らかな権利でも、適切な時に適切な登記申請をしていないと、後になっては、登記申請をすることも難しい、ということを実感しました。