認定考査の第2問、第3問研究(前半)

認定考査の第1問は、前回のブログの通り、原告Xと被告Yの言い分を読んで、訴訟物請求の趣旨原告の請求原因事実被告の抗弁の要件事実原告の再抗弁の要件事実などを書いていく問題になっています。
満点は取れないし、原告の請求原因→被告の抗弁→原告の再抗弁というキャッチボールの構造を見誤ると大量失点もあり得ます。(結構しっかりした勉強を要します)

よって、第2問、第3問で、しっかり得点することが重要だと言われています。(全体70点満点中40点以上で合格です)

第2問、第3問には、民事訴訟法の手続き民事保全法の手続き簡裁訴訟代理権の範囲司法書士倫理などが出題されます。
民事訴訟法の手続き、民事保全法の手続きは、オートマ(司法書士試験)の範囲がほとんどですし、簡裁訴訟代理権・倫理についても、必読書「簡裁訴訟代理等関係業務の手引き」のQ&Aの細かいパターンが出題されるわけではなく、毎年似たような論点が繰り返し聞かれているように思います。

試験準備をかねて、過去問を整理してみました。(実際の試験では、解答を200字程度の文章にする必要があります)

第1回認定考査

第2問(改)
X→Y 訴額100万円の訴訟係属中、
Y→X 訴額150万円の反訴があった。
Xの訴訟代理人司法書士Aは、Y→Xの反訴においてXを代理できるか?

解答:できない。訴額140万円を超えるから。

第3問
X→Y訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、Y→訴外Bの
①訴状作成できるか?
②所有権移転登記手続きできるか?

解答①:Xの同意があればできる。
解答②:公正を保ち得ない事件の受任にあたる可能性があり、受任しない方が良い。

第2回認定考査

第2問(改)
X→Y(債務者)、Z(保証人) 貸金返還請求100万円のとき
Xの代理人司法書士Aは、YおよびZへの訴えを併合して提起できるか?

解答:できる。訴額は100万円となるから(200万円ではない)。

第3問
X→Y(債務者)、Z(保証人) 貸金返還請求100万円のとき
司法書士Bは、YとZの両名の代理人になれるか?

解答:なれる、が、求償など将来対立する可能性があること等を十分に説明要。

第3回認定考査

第2問
X→Yの訴訟において、司法書士Aが無料法律相談会で、Yから
①上記事件の具体的な相談
②別の登記の相談を受けていた場合に、
Xの代理人になれるか?

解答①:なれない。すでに当事件においてYの協議を受け、賛助しているから。
解答②:なれる。

第3問
X→Y 土地(100万円)の所有権確認訴訟。Yから、
①訴状受領後直ちに
②第1回口頭弁論で本案陳述した後
地方裁判所への移送の申立てがあった。Xの代理人司法書士Aは、訴訟遂行できるか?

解答①:できない。地方裁判所へ必要的に移送される。
解答②:できる。必要的に移送はされない。

第4回認定考査

第2問
X→Yの訴訟において、司法書士法人の社員AはXからの依頼で訴状を作成していた後、法人を脱退した。
AはYの代理人になれるか?

解答:なれない。自ら関与した事件の相手方の代理人にはなれない。

第3問
X→Yの60万円の売買代金支払い請求訴訟。Xの代理人司法書士A。
①Aは訴えの提起後、少額訴訟による裁判を求めることができるか?
②少額訴訟での勝訴後、Aは執行手続きができるか?
③②で、少額訴訟→通常訴訟に移行していたときはどうか?

解答①:できない。訴えの提起の時にしなければダメ。
解答②:自ら代理した事件については、少額訴訟債権執行の手続きの代理ができる。
解答③:執行手続きの代理はできない。少額訴訟債権執行のみ認められている。

第5回認定考査

第2問
X→Yの訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、訴外B→Xの訴状を作成できるか?

解答:Xの同意があればできる(通常は同意をもらえない)。

第3問
X→Yの訴訟で、Y敗訴の場合、Yの代理人司法書士Cは控訴できるか?

解答:控訴状の提出まではできるが、訴状に攻撃防御方法の記載はできない。

第6回認定考査

第2問
X→Yの訴訟中、Xの代理人司法書士Aは、Yから筆界特定に関する法務局提出書類作成の依頼を受けられるか?

解答:Xの同意があればできる。

第3問
X→Yの訴訟中、Yに対し占有移転禁止の仮処分命令がされた。Yの代理人司法書士Bは、
①保全異議の申立て、保全異議の手続きの代理はできるか?
②保全異議が却下された場合、保全抗告の申立て、保全抗告手続きの代理はできるか?

解答①:簡裁が管轄の場合、どちらも代理できる。
解答②:保全抗告の申立てはできるが、保全抗告に係る手続きはできない(地裁管轄のため)。

第7回認定考査

第2問
X→Y(保証人)、Z(債務者) 貸金返還請求訴訟の場合
①貸金80万円で、YとZへの請求を併合して訴えを提起する場合の訴額?
②貸金130万円で、Zへのみ訴えを提起する場合の訴額?

解答①:80万円(加算されて160万円にならない)
解答②:130万円(利息・損害金などの附帯請求額は含めない)

第3問
X→Y(保証人)、Z(債務者) 貸金返還請求訴訟の場合 、Yの代理人司法書士Aは、Zの裁判書類作成の代理はできるか?

解答:YZ間の対立が強く予想される場合は、Zの裁判書類作成の代理の受任はしない方が良い。

第8回認定考査

第2問
X→Yの訴訟において、Xが主張した主要事実をYが認めた。その後Yの代理人となった司法書士Aは、その自白が間違いであったと主張して争うことはできるか?

解答:自白の撤回は、「相手側の同意があれば」または「自白が真実に反し錯誤に基づいたものであれば」できる。AはXの同意を得るか、Yの自白が真実に反するものであることを立証する方針で、争うことができる。

第3問
X→Yの訴訟において 、Xの訴訟代理人Q司法書士法人。
①Q法人の従業員司法書士Bは、Yの訴訟代理人になれるか?
②Yからの依頼が後見登記申請手続きの場合はどうか?

解答①:なれない。
解答②:司法書士倫理上難しいと考えられる。(Xの立場にたてば公正を保ち得ない)

第9回認定考査

第2問
X→Yの訴訟において 、Yの証人なのにXに有利な証言をした。
①裁判所は、Xに有利な証拠として採用できるか?
②Yの代理人は、証人尋問の後、証拠の申出の撤回ができるか?

解答①:できる(証拠共通の法則)。
解答②:できない。(証人尋問前ならできます)

第3問
X→Yの訴訟において、訴訟が係属する前に、司法書士AがYから
①無料法律相談会で上記事件の具体的な相談を受けて教示していた
②Y→Zの訴訟代理人になり、和解を成立させ、報酬を得ていた
AはXの代理人になれるか?

解答①:なれない。
解答②:なれる(Y→Zの訴訟は終了している)。

第10回認定考査

第2問
X→Yの訴訟(賃貸借契約に基づく賃料請求)において、Yが雨漏り修繕費用での相殺の抗弁を提出した。
YはXに対し、修繕費用を請求する別訴を提起できるか?

解答:(同一権利について別訴でそれぞれ既判力が生じることを防止する)二重起訴禁止の考え方から、別訴を提起すべきではない。

第3問
X→Yの訴訟において 、Xの訴訟代理人Q司法書士法人。
Qの使用人であった司法書士Aが独立したあと、Yの代理人になれるか?

解答:法人在職中、簡裁訴訟代理関係業務または裁判書類作成業務で自ら本事件に関与していた場合は、なれない。