令和2年度認定考査解答例
これで、令和2年度~令和6年度の過去5年分の解答例がブログ内にあります。
9月の認定考査対策として、少しでもご参考になりましたら幸いです。
第1問
登場人物
X:中古車の売主
Y:中古車の買主
A:XY間の金銭消費貸借契約の代理人?
原告Xの主な主張
1)中古車をYに売ったのに、売買代金の支払いがない。
被告Yの主な主張
1)中古車は、ポンコツで契約不適合だ。契約解除をする。
2)Aを通じて、Xにお金を貸している。それと売買代金を相殺する。
小問(1)訴訟物
売買契約に基づく代金支払請求権
小問(2)請求の趣旨
Yは、Xに対し、50万円を支払え
小問(3)Xの請求原因の主要事実
①Xは、令和2年6月1日、Yに対し、本件中古車を代金50万円で売った。
小問(4)Yの抗弁の主要事実
抗弁1:契約不適合による契約解除
1⃣Yは、令和2年6月1日、Xから、本件売買契約に基づき、本件中古車の引渡しを受けた。
2⃣本件中古車は、以下のとおり、品質に関して本件売買契約の内容に適合しないものであった。
1)令和2年6月15日、本件中古車が、突然、動かなくなった。
2)修理業者は、本件中古車にはエンジン部分に不具合があると言っていた。
3)Yは、1⃣の引渡しを受けてから、ほとんど運転をしておらず、1)、2)の不具合は、1⃣のときからあった。
4)Xは、1⃣の時点で、Yが本件中古車を乗用車として購入していることを知っていた。
3⃣Yは、令和2年6月26日、Xに、本件中古車を修理するように催告した。
4⃣令和2年7月31日は、経過した。
5⃣Yは、令和2年12月1日、Xに、本件売買契約を解除するとの意思表示をした。
抗弁2:代金支払債権を貸金債権と相殺するとの抗弁
1⃣‘ Yは、Aに、令和2年4月30日、弁済期を令和2年7月1日と定め、30万円を貸し付けた。
2⃣‘ Aは、1⃣‘の際、Xのためにすることを示した。
3⃣‘ Xは、令和2年4月15日、Aに、1⃣‘の代理権を与えた。
4⃣‘ 令和2年7月1日は到来した。
5⃣’ Yは、令和2年12月1日、Xに対し、1⃣‘の貸金債権と請求原因1の代金債権とを対等額にて相殺するとの意思表示をした。
小問(5)Xの再抗弁の主要事実
再抗弁1:抗弁2に対し、Yは代理権濫用の目的について悪意であったとの抗弁
⓵ Aは、自身の利益のために、Xの代理人としてYから30万円を借りる意思表示をした。
⓶ Yは、⓵の事実を知っていた。
再抗弁2:抗弁2に対し、Yは代理権濫用の目的を知ることができたとの抗弁
⓵‘ ⓵と同じ
⓶’ Yは、⓵の事実を以下のとおり、知ることができた。
1)Yは、Aと同じ職場で働いており、Aには以前からひどい浪費癖があり、Aの交際相手のお金にも手を出していたことを知っていた。
2)Yは、令和2年4月29日、「Aから至急現金が必要だが、手元に資金が無いので貸してくれないかと言われた。」と話しており、Aが金に困っていた状況もよく知っていた。
小問(6)Yの再々抗弁の主要事実
再々抗弁:再抗弁2に対し、代理権濫用の目的を知ることができたことの評価障害事実
Yは、令和2年4月30日、Xの自宅に電話をし、Xの母Bに、「Aが言っていることは間違いはない。Xは、至急現金を用意したいと考えている。AとXは、いとこ同士である上、一緒に新たな事業を始めようとするなど、強い信頼関係があるので、AがXに迷惑をかけるようなことはない。また、Aが受け取った30万円はBが引き取ってXに渡すことになっている。安心してAに30万円を渡してほしい」と言われ、AがXのために、1⃣‘をすることを確認した。
小問(7)消滅時効の完成?
消滅時効は完成していない。
本件売買契約に基づく代金債権の弁済期は令和2年7月1日であり、消滅時効の起算点は、令和2年7月2日となり、令和7年7月2日の経過により、消滅時効が完成する。
一方で、Yは、令和5年7月1日に、代金債務の存在を認め、支払の猶予を申し入れしており、これは時効の更新事由である債務の承認にあたり、令和8年7月2日においては、消滅時効は完成しないから。
小問(8)Yの主張する事実について、「不知」または「沈黙」した場合の証拠調べの要否
① Yの主張する事実は知らないと陳述した場合
証拠調べをすることなく認定することはできない。
XがYの主張する主要事実を知らない(不知)と陳述した場合は、当該事実を争ったものと推定される(民訴法159条2項)ため、裁判所はこの事実を認定するためには、証拠調べをする必要があるから。
② Yの主張する事実に対して何らの陳述もしなかった場合
証拠調べをすることなく認定するすることができる。
XがYの主張する主要事実に対し、何らの陳述もしなかった(沈黙)場合は、相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合に該当し、その事実を自白したものとみなされる(民訴法159条1項)。弁論の全趣旨により争ったものと認められない限り、裁判所は証拠調べをすることなく、その主要事実を認定することができるから。
第2問(認定司法書士の控訴審に対する権限について)
(1)
控訴の提起をすることができる。
認定司法書士Pは、自分が代理した簡易裁判所での訴訟について、あらためて控訴に関する特別の委任を受ければ、控訴の提起をすることができるから。
(2)
裁判所に提出する書類の作成業務として、準備書面は司法書士Pが作成し、裁判所への提出はXが行うという様態で、関与することができる。
認定司法書士には、上訴審について訴訟当事者を代理する権限はないが、司法書士として裁判所提出書類作成業務を行うことができ、上訴審の準備書面を作成することはできるから。
第3問(認定司法書士の業務を行い得ない事件について)
受任することはできない。
司法書士Qは、Xの訴訟代理人として関与している本件訴訟の継続中であっても、Xの同意があれば、他の事件につき相手方Yの裁判書類作成関係業務の依頼を受任ができるとされている。
しかし、YのAに対する無権代理人責任を追及する訴訟は、本件訴訟と基礎を同一とするものであり、また、Aの代理権の有無について、XとYの主張は対立している。
よって、到底、公正を保ち得る対応ができるとは考えられず、受任をすべきではないから。