令和6年度行政書士試験を解いてみました(民法編)

択一式は5問正解を目標に

結構、難しい問題が出題されているな、と思いました。
全ての肢を読んで考え込むと泥沼にはまります。
確実に〇、確実に✖という肢を2~3個見つけて、それだけを根拠に解答しましょう。
(自分の知らない肢について考え込むことは、貴重な試験時間の無駄遣いです)
そのためには日ごろから、「条文」と「どのテキストにも載っているような判例」について、繰り返し、理解を深めることです。
・条文→具体例への置き換え
・具体的な例題→どの条文が適用されるか考える
の繰り返しだと思います。

記述式対策が民法全体の対策となる

記述式については、上記の、具体的な例題→どの条文が適用されるか考える、というプロセスそのものが出題されています。
民法の主要な論点について、これを繰り返し練習することで、民法全体の力が付いていくように思います。

ところが本年度については、動産売買の先取特権(!?)、登記請求権の代位行使(?)が出題されており、行政書士を目指す受験生にとっての重要度を考えても、どうかな?という疑問が残る出題だったように思います。

各問題について

1 明確に〇(民31条)
2 ✖(失踪宣告はその人の権利能力を失わせる制度ではない)
3 明確に✖(民32条1項)
4 明確に✖(民32条2項)
5 ✖(判例)
→ 1だけを見て、〇と判断したい問題です。

1 ✖(民703条等の理解が問われている)
2 〇(金銭債務に不可抗力による不能はないことを聞いている?)
3 明確に〇(民971条)
4 〇(取消しに法定代理人の同意は不要)
5 明確に〇(民122条)
→ これも1だけを見て、✖と判断したいです。

1 〇(基本です。民899条の2の理解)
2 〇(同上)
3 〇(同上)
4 ✖(基本です。相続放棄を主張するのに対抗要件は不要です)
5 〇(基本です。民899条の2の理解)
→ 相続放棄以外、同じことを聞いています。考え込まず、4を見つけて即答したいです。

1 ✖(常識的にそんなことはないですよね)
2 ✖(6か月間は引渡しを猶予されます。民395条)
3 〇(物上代位の行使の具体的な内容が分かっているか問われています)
4 ✖(結構細かい判例知識です)
5 ✖(転貸賃料債権には、原則、物上代位することはできません)
→ 結構難しいかも。3を自信を持って〇と判断したいです。

1 〇(民450条。少し細かい条文です)
2 ✖(同上)
3 〇(民457条。これは基本だと思います)
4 〇(民447条。これも基本です)
5 〇(同上)
→ 「保証債務」の基本が分かっているか問われています

1 ✖(他人物売買契約は原則有効です)
2 ✖(当然に所有権が移るものではありません)
3 ✖(即時取得と無権代理は別の制度です。即時取得はまっとうな取引行為でなければ成立しません。)
4 ✖(民117条をしっかり理解していることが必要です)
5 〇(同上)
→難しいと思います。いろいろな論点をしっかり理解している必要があります。

1 ✖(民670条。そんなことはないですよね。)
2 ✖(同上)
3 ✖(いつでも出資金等を分割請求されたら、組合の事業は成り立ちません)
4 ✖(いつでも好き勝手に脱退されたら、組合の事業は成り立ちません)
5 〇(民672条。納得できる規定ですね。)
→ 組合は今年度の司法書士試験にも出題されました。
組合とは、各組合員が出資(金銭・労務)して共同事業を営む契約(民667条)です。
なかなか組合に関する条文を学習する機会はないと思いますので、上記から常識的に判断するしかないですね。

1 ✖(民711条。父母、配偶者、子です。覚えておきましょう。)
2 ✖(会社の名誉棄損の損害賠償もよくニュースになっていますね)
3 〇(最判昭43.11.25)
4 ✖(定期金による損害賠償請求もよく聞きます)
5 〇(最判平8.5.31)
→ 正解が2つあると思います。1,2,4の✖が比較的明白なので、3or5で考え込んだ人はもったいなかったです。

1 ✖(遺産分割協議は債務不履行で解除できないのは基本です)
2 〇(またまた民899条の2です。難しいと思います。)
3 ✖(民906条の2。常識的に考えても判断できると思います。)
4 ✖(遺産分割協議、請求訴訟に期限はありません。ただし10年経過すると寄与分などの請求ができなくなります。)
5 ✖(遺産分割前の預金の払い戻し制度があります)
→ 難しいと思います。各肢それぞれを考え込むと泥沼にはまります。

問題45解答例
動産売買の先取特権に基づき、甲を競売して得た代価から、一般債権者に優先して弁済を受ける。(44字)
→ 難。動産売買の先取特権(民321条)!えらいマイナーな条文からの出題ですね。

問題46解答例
Bに対する登記請求権を保全するため、BのCに対する移転登記請求権をBに代位して行使できる。(45字)
→ やや難。登記請求権の代位行使が行政書士試験受験生にどれくらいなじみがあるかですね。