相続登記で「一人遺産分割協議」は認められるか?

司法書士試験令和4年午後第21問ア

平成25年4月1日に死亡したAが所有権の登記名義人である甲不動産について
ア Aの相続人がB及びCであり、Aの遺産分割協議がされず、かつ、甲不動産について相続を原因とする所有権の移転の登記がされないまま、Bが死亡し、その相続人がCのみである場合には、Cは、甲不動産について「平成25年4月1日相続」を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができる。
→ ✖

これは、(よく分かっている人ほど)、判断が難しい選択肢だと思います。

実務でよくある登記

Aが所有権の登記名義人である甲不動産
被相続人夫A = 妻B
       ↓
    子C  子D

Aが令和3年〇月〇日に死亡したが、相続登記をしないまま、Bが令和7年△月△日死亡

「被相続人Aの相続」について、
・相続人Bの相続人C
・相続人Bの相続人D
・相続人C
・相続人D
の、実質CとDとの遺産分割協議により、Cが甲不動産を相続すると決めることができる。

[登記申請例]
登記の目的  所有権移転
登記原因日付 令和3年〇月〇日相続
申請人    相続人(被相続人A)C

令和4年午後第21問アの状況(日付は変更)

被相続人夫A = 妻B
       ↓
      子C

Aが令和3年〇月〇日に死亡したが、相続登記をしないまま、Bが令和7年△月△日死亡

「被相続人Aの相続」について ← 誰の相続についての話かを明確にすることが大事
・相続人Bの相続人C
・相続人C
の実質「C一人」の遺産分割協議により、Cが甲不動産を(令和3年〇月〇日に)単独で相続する、と決めることができるか?

結論はダメ

Bの生前に、BとCとで、Cが相続する旨の遺産分割協議をした事実があり、それを証する書面を提供しない限り、下記の登記を申請しなければならない。
(平28.3.2-154号、登記研究759、765、794等)

[登記申請例]
(1件目)
登記の目的  所有権移転
登記原因日付 令和3年〇月〇日相続
申請人    相続人(被相続人A)
        持分2分の1 B
          2分の1 C

(2件目)
登記の目的  B持分全部移転
登記原因日付 令和7年△月△日相続
申請人    相続人(被相続人B)
        持分2分の1 C

よくある実例では、残った相続人が複数いるので「協議」ができ、本問の例では、残った相続人がC1人なので「協議」できない、とでも理解して覚えるしかないと思います。