組織再編のポイント② 吸収分割
前回は、全ての組織再編の基本となる「吸収合併」を取り上げました。
今回は、「吸収分割」です。
吸収合併との大きな相違点は、
1)吸収合併消滅会社は消滅するが、吸収分割会社はそのまま存続する。
2)承継会社からの対価の受け手が、吸収合併の場合は株主であるのに対し、吸収分割の場合は吸収分割会社そのものである。
ということになります。
これらに着目して、吸収合併と比較する形で整理していきます。
吸収分割とは
吸収分割承継会社(X株式会社とする)が、吸収分割会社(A株式会社とする)の「権利義務の一部を分割したもの」を承継することです。
A株式会社は、吸収分割後、そのまま存続します。
A(株) → 一部の権利義務 → X(株)
A(株)は存続
吸収分割承継会社からの分割対価
A(株)は存続するので、A(株)そのものに、X(株)から対価を交付します。
X(株) → A(株)
X(株)の株式、新株予約権、新株予約権付社債、金銭、何でも良いです。無対価もありです。
X(株) → A(株)の新株予約権者
上記のように、原則として対価の受け手はA(株)そのものですが、A(株)の新株予約権者に、A(株)の新株予約権と引換えに、X(株)の新株予約権を交付することができます(新株予約権の承継といいます)。
A(株)が、新株予約権証券発行会社であり、新株予約権の承継がある場合は、新株予約権証券提供公告が必要。
一方で、対価の受け手はA(株)そのものであって、A(株)の株主ではないので、株券提供公告が必要となることはありません。
吸収分割を承認する株主総会
X(株):特別決議が原則。A(株)が特別支配会社であれば省略可(略式組織再編)。対価が純資産の20%以下であれば省略可(簡易組織再編)。
A(株):特別決議が原則。X(株)が特別支配会社であれば省略可(略式組織再編)。分割する資産が、総資産の20%以下であれば省略可(簡易組織再編)。
反対する株主と新株予約権者の保護
上記、株主総会で吸収合併に反対した株主、あるいは、略式組織再編で株主総会が省略された場合の反対株主には、反対株主の株式買取請求制度があります。
新株予約権者にも同様の制度があります。
債権者保護手続きの要否
債権者の保護手続きとは、その会社の債権者が「その吸収合併、ちょっと待った!」と異議を言える制度です。
【債権者保護手続きが必要な場合(共通ルール)】
(1)債権者の請求書の宛先が変わってしまう場合(請求先が優良会社から経営危機会社になるおそれがある)
(2)会社の財務状況が悪化するおそれがある場合(債権を回収できないおそれが生じる)
A(株)について
請求書の宛先がA(株)からX(株)に変わってしまう債権者 → その債権者について、債権者保護手続きを要する
A(株)が「人的分割(X(株)からの対価をそのまま株主に配当してしまう)」をする場合
→ 全ての債権者について債権者保護手続きを要する
∵財務悪化の恐れがある
X(株)の債権者 → 全ての債権者に対して債権者保護手続きを要する
∵X(株)は、A(株)の債権「債務」の一部を承継するので、財務が悪化する恐れがある
