司法書士試験 民法の譲渡担保は出題される?
昨年は出題されなかった
私の知る限り、近年はずっと、民法の第15問に出題され続けており、受験生時代は対策せざるを得ませんでした。
ところが昨年令和5年度は出題されず、少し驚きました。
民法改正の影響があるのか?今後はもう出題されないのか?今年度の試験を注目しています!
そもそも「譲渡担保」とは?
条文の定めがなく、解釈・判例等によって認められている「非典型担保」
1)主旨
債権者が債権担保を目的として、所有権等の財産権を債務者等(物上保証も可)から譲り受け、被担保債権の弁済をもって、その財産権を返還する形式の担保方法
設定時に譲渡:債務者(設定者)→財産権→債権者、
債務弁済後に返還:債権者→財産権→債務者(設定者)
2)問題となる特徴
・目的物の価額が債権額を超過する場合、「清算」手続きが必要
・公示されないので、第三者に財産権の所有権が移ってしまったときの処理が必要
司法書士試験問題を正解するために必要な判例知識は8つ!
まずは、譲渡担保を3つのパターンに整理しましょう!(簡単のため、財産権は動産としてイメージ)
いま学んでいる知識がつぎの(1)~(3)のどのパターンにおけるものかをしっかり認識することがコツと思います。
(1)動産の占有を債権者に実際に移すパターン(現実の引き渡し)
(2)債務者が動産の占有を継続するパターン(占有改定)
(3)上記占有改定において、占有する動産が集合動産であるパターン
→ お店がお金を借りるのに、お店の倉庫の商品群に担保を設定するイメージ
(1)における判例知識
①譲渡担保権者は目的物の所有権を取得する。ただし、担保目的を超えては行使しないという拘束を受ける。
②譲渡担保権者が目的物を第三者に処分した場合、第三者は「善意悪意によらず」所有権を取得する。
③債務の弁済が先履行であり、目的物返還請求はその後である。また、目的物の受戻権を放棄して、清算金の支払いを請求することはできない。
→ ⑤と混同しない!
(2)における判例知識
④譲渡担保権の設定は、目的物の引き渡しが占有改定でも第三者に対抗できる。(パターン(2)そのまま)
⑤譲渡担保権の実行において清算金が生じる場合、清算金が支払われるまで設定者は目的物を留置できる。清算金と目的物の返還は同時履行となる。
→ ③と混同しない!
(3)における判例知識
⑥構成部分の変動する集合動産でも、種類・場所・範囲などで目的物の範囲が特定できる時は、譲渡担保の目的物とできる(パターン(3)そのまま)
⑦設定者が、通常の営業範囲を超えて動産を処分した場合でも、動産が集合物から離脱すれば、その処分の相手方が所有権を取得する。
⑧集合動産譲渡担保に基づく物上代位が認められる。
実際の試験問題において
令和4年度
ア ✖ 知らない場合は判断しない。
イ 〇 ⑦ 通常の営業の範囲を超えても~、だから当然。
ウ 〇 知らない場合は判断しない。
エ 〇 ⑤そのまま
オ ✖ ③そのまま
→ イエオの判断で正解できる
令和3年度
ア 〇 ⑥そのまま
イ ✖ 知らない場合は判断しない。
ウ 〇 知らない場合は判断しない。
エ ✖ ③そのまま
オ 〇 ⑤そのまま
→ アエオの判断で正解できる
令和2年度
ア ✖ 知らない場合は判断しない。
イ ✖ ②ちょっと迷うかもですが、「善意悪意によらず」なので。
ウ ✖ ③そのまま
エ ○ 知らない場合は判断しない。
オ ○ 知らない場合は判断しない。
→ ウの明確な×、イをなんとか✖と判断すれば、それだけを根拠に正解は可能。
平成31年度
ア ○ ⑧そのまま
イ ✖ ⑥から何とか判断できそう
ウ ○ ⑥から何とか判断できそう
エ ○ ⑥そのまま
オ ✖ ⑦そのまま
→ この年は集合動産の譲渡担保だけの問題。全て⑥~⑧の論点に集約できる。