認定司法書士は簡易裁判所の全ての手続きの代理ができる?
簡易裁判所で訴額180万円の裁判?
簡易裁判所において、「訴額が180万円の貸金返還請求訴訟」を傍聴して、何で簡易裁判所で裁判できるの?と疑問を持ったことがあります。
種明かしをすると、合意管轄(民訴法11条)によるもので、貸金業者が金銭消費貸借契約書を作成する際、合意管轄裁判所として簡易裁判所を記載することによるものです。
貸金業者が簡易裁判所を管轄裁判所として選択することのメリットは、許可代理人の制度(民訴法54条)により、会社の従業員を訴訟代理人にすることができ、判決や裁判上の和解による貸金回収にかかる手間と費用をできるだけ小さくすることにあると思います。
民訴法11条1項:
当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
民訴法54条1項(ただし書き以降)
簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でないものを訴訟代理人とすることができる。
認定司法書士は、簡易裁判所においても、訴額が180万円の貸金返還請求訴訟の代理をすることはできない
司法書士法3条1項6号イ(簡易裁判所の手続きで代理できること)に、「民事訴訟法の規定による手続きであって、訴訟の目的の価額が140万円(略記)を超えないもの」と規定してあるからです。
その他司法書士が代理できないもの、また代理権を途中で失うケース
①民事執行手続(少額訴訟債権執行手続を除く)は代理できません。
②民訴法19条2項の必要的移送
不動産に関する訴訟で、被告が本案弁論をする前に、地方裁判所への移送を申立てした場合
③民訴法18条の簡易裁判所の裁量移送
ややこしい裁判において、相手方弁護士の申立てや裁判所の職権で、地方裁判所に移送される場合
④民訴法274条の反訴の提起に基づく移送
詳細は省略
⑤140万円の貸金返還請求に200万円の反対債権をもって相殺の抗弁を提出する場合
140万円で対抗するのだからOKと思っていましたが、200万円の債権の存否に争いがあるなどの場合、司法書士がこれを代理することは司法書士法違反になるそうです。(by特別研修)
本人裁判支援を軸足にすることが必要?
上記①~⑤などのほかにも、そもそも、控訴をする場合、される場合に、第二審以降において、認定司法書士の代理権は無くなります。
よって、訴訟代理人になることを受任する場合は、依頼者に途中で代理権がなくなるケースがあり、それ以降は本人裁判の支援になることを、よくよく説明する必要があります。(これもby特別研修)
一方で、(認定司法書士でなくても)、訴状、答弁書、準備書面などを作成し、法廷の傍聴席まで同行支援することはできるので、司法書士の裁判業務は、本人裁判支援が軸足になるのではないか、と今は思っています。