司法書士試験 苦手の克服(2)~組織再編と債権者保護手続きの要否~
組織再編による変更登記申請書がほぼ無意識でも書けたときが合格のとき
平成31年度司法書士試験、最後の37問、商業登記法記述式問題において出題された、吸収合併による変更登記申請書が、ほぼ無意識で手が動いて何とか最後まで書けたときが、私の合格のときでした。
合格直前の数年間は、択一式35問を70分で、不登法記述式を60分で、そして最後に商登法記述式を50分でまとめるペースが続いていましたが、最後の商登法記述式は、それまでの130分間の極度の集中の連続によって(そして自らの老齢化によって)、疲労とあせりの極致であり、全くいつもどおりの思考力が働きません。
それでも何とか手を動かして、合格レベルの答案をまとめなければならないのですが、それができたときが合格のときだと思います。
丸暗記では無理
「吸収合併による変更登記」は例示ですが、受験生にとってやや苦手な分野を丸暗記で対応しようとしても、上記のような無意識状態で手が動くものではありません。
会社法も商業登記法も比較的近年に立法されたものですから、制度趣旨や制度そのものに、「システマティックな考え方、法則」のようなものがあります。
条文も(引用条文が多すぎて、そのままではとても読みにくいのですが)、その法則がそのまま、書きぶり(形式)に表れているものが多いと思います。
勉強方法としては、テキストの本文や表などの丸暗記ではなく、その「システマティックな考え方、法則」を掴んでいくことがコツだと思います。
組織再編ではまず図を書こう
完全子会社等→ 取得させるもの →完全親会社等
← 株主又は会社への対価 ←
組織再編では、完全子会社等が完全親会社等に、株式、事業、会社そのもの等を取得させ、完全親会社等は、その対価として、完全子会社等の株主や完全子会社そのものに対価を交付します。
債権者保護手続きの要否の判断方法
1)完全子会社等において
・債権者にとって、請求書の宛先が変わるかを確認します
→ 変わらなければ、債権者保護手続きは不要です
→ 変われば、「その債権者に対して」債権者保護手続きを要します
(財務状況の悪い会社に、請求しなければならないかもしれない)
2)完全親会社等において
・債権者にとって、他の債権者が増えるかを確認します
→ 増える場合、全ての債権者に対して債権者保護手続きを要します
(債権を回収するライバルが増える)
・完全親会社から、株式以外の財産が流出する(交付される)か確認します
→ 株式以外の財産が流出する(交付される)場合、全ての債権者に対して債権者保護手続きを要します
(会社の財務状況が悪化するかもしれない)
吸収合併の場合
(消滅する)
完全子会社等 → 会社そのもの → 完全親会社等
← 株式など ←
1)完全子会社等において、必ず、(全ての債権者に対して)債権者保護手続きを要する
(会社が消滅するから、請求書の宛先は必ず親会社に変わる)
2)完全親会社等において、必ず、債権者保護手続きを要する
(子会社の債権者を丸ごと引き受けるから債権者のライバルが増える)
株式移転の場合
(新たに設立)
完全子会社等 → 全ての株式 → 完全親会社等
← 株式など ←
1)完全子会社等において、新株予約権付社債債権者が、対価として、親会社の新株予約権付社債の交付を受けるときに、その債権者に対し債権者保護手続きを要する
(その社債の請求書の宛先が親会社に変わる)
2)完全親会社等において、必ず、債権者保護手続きは不要
(これから設立する会社に既存の債権者はいない)
株式交換の場合
完全子会社等 → 全ての株式 → 完全親会社等
← 株式など ←
1)完全子会社等において、新株予約権付社債債権者が、対価として、親会社の新株予約権付社債の交付を受けるときに、その債権者に対し債権者保護手続きを要する
(その社債の請求書の宛先が親会社に変わる)
2)完全親会社等において、対価として、新株予約権付社債、又は、株式以外の財産(金銭等)を交付するときに、全ての債権者に対し債権者保護手続きを要する。
(債権者のライバルが増える、または株式以外の財産が流出する)
吸収分割の場合
完全子会社等 → 事業等 → 完全親会社等
← 株式など ←
1)完全子会社等において、ある債権者について請求書の宛先が親会社に変わる場合、その債権者に対し債権者保護手続きを要する
(その債権者にとって請求書の宛先が親会社に変わる)
1)’完全子会社において、人的分割(対価をそのまま株主に還流する)をする場合、全ての債権者に対し債権者保護手続きを要する
(財産が流出し、財務状況が悪化する恐れがある)
2)完全親会社等において、必ず、全ての債権者に対して債権者保護手続きを要する
(事業を譲り受けることは、債権・債務ごと引き受けることだから、必ず、既存の債権者にとってライバルが増える)
(株式以外の金銭等を交付すれば、財務状況も悪化する恐れがある)
新設合併、新設分割なども考え方は同じですから、考えてみましょう。